シュウ酸化鉄で火のカーテン

 

今回はシュウ酸化鉄を用いた面白い実験を行ってみました。

 

動画


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シュウ酸化鉄(Ⅱ)を強熱して熱分解をしたものを空から振りまくと、空中で発火する現象が観察できる。ちなみにシュウ酸化鉄はシュウ酸の塩である。

通常の鉄は自然発火を起こさないが、今回熱分解で得られた鉄は試験管から振り落とすだけで発火している。これは、表面積の大きさに理由がある。鉄と酸素が反応するには、一定の粒子数がなくてはならない。そこで表面積を大きくしてやることで単位体積当たりの粒子数が増大し、反応速度が上昇、容易に酸化反応が起こるようになり、燃えるという仕組みである。そのため、そのままでは燃えない鉄くぎをやすりで削って細かい粉にすると燃える様子が観察できる。スチールウールも、通常の鉄よりも細く表面積が大きいため簡単に燃える。つまり、同じ金属でも、形が変わると科学的性質も変化すると言える。

 

シュウ酸化鉄(Ⅱ)二水和物は加熱により黒味を帯びてくるが、反応としては次のようになる

 

FeC₂O₄ ・ 2H₂O → Fe + 2CO₂ + 2H₂O

 

加熱中に気体が発生する様子は、動画内でも確認できる。ここから、熱分解反応が起きていることが観察できる。(黄色い煙が出ている。また、COも発生している。)

加熱を続けるにつれて黒くなっていくが、これはシュウ酸の部分が抜け落ちたFe、FeO、Fe₂O₃、Fe₃O₄などが混在している微粒子である。表面積の大きい粒の形態であるため、不安定であり、安定を求めて空気中の酸素と化合し酸化反応が起こって発火する。また、燃えた鉄は酸化されるので、茶褐色の酸化鉄(Ⅲ)Fe₂O₃が生成され、濡れた新聞紙の上にそれが落ちるので観察ができる。

生成した黒粉末(鉄の混合物)は、空気に触れさせないようにゴム栓で栓をしておくことで、約1週間ほど保存が可能である。

上手くカーテンを作るには、鉄粉を少しずつ降らせること、なるべく高い位置から降らせるとよい。

 

 

【注意点】

  • 加熱中は沸騰が起こるので、拭きこぼさないように注意を払う。
  • 水が試験管口付近に生成されるため、割れないようにふき取ったり試験管全体を加熱して取り除く。
  • 生成した黒粉末はさらさらとしているため、振りながら加熱する際、こぼさないようにする。(※振りこぼすと発火の恐れ)
  • 鉄粉を振りまく際はその下に濡れた新聞紙を用意しておく。
  • さび(酸化鉄)が机や床に散ることになるので非常に汚れる可能性が高い。濡れふきんで何度もふき取って清掃を必ず行う。また、近くにさびの影響をうけてはいけないもの、燃えやすいものをどかしてから実験を行う。

 

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都留文科大学理科教育の一環

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