【概要】
燃焼において石灰水を使用するが、燃焼=二酸化炭素が発生して石灰水が濁るとのイメージを変化させるような実験を行った。
動画
・準備物
スチールウール、集気びん(小)、石灰水(濁っていないか確認)、燃焼さじ、ガスライター、ガラス蓋、酸素ガスボンベ
・操作手順
- 集気びんに石灰水を入れる。この際、石灰水が濁っていないことを確認する。
- ガラス蓋をしながら酸素ガスボンベで、集気びん内に酸素を注入する。その後一度蓋をしておく。
- スチールウールをほぐして空気を含めるようにする。そのスチールウールを燃焼さじに乗せて固定する。
- ガスライターでスチールウールに着火し、それを集気びん内へ入れる。燃焼時時、ガラス蓋で蓋をしておき、内部や外部の気体の出入りをなるべく防ぐ。
- 燃焼さじを取り出し、ガラス蓋で蓋をして集気びんを振る。その後、様子を観察する。
・留意点
- ガスを注入するときやスチールウールが燃焼しているときは、ガラス蓋でなるべく蓋をして気体の出入りを制限すること。外部の気体の影響を極力減らすため。
- スチールウールがほぐれていないと上手く燃焼しないので注意。
- 酸素は注入しなくとも実験は可能だが、酸素を注入した方が燃焼がよく観察されるので推奨。ただし取り扱いには注意。
原理
通常、燃焼が起こると水と二酸化炭素が発生し、集気びん内が曇ったり石灰水が濁る。(集気びん内の曇りは水蒸気ではなく水であることに注意)
しかし今回、スチールウールの燃焼では曇りも石灰水の濁りも観察されなかった。それはなぜか。実は炭素が含まれているかが重要な点となる。木やろうそくには炭素や水素が含まれているが、鉄には炭素も水素も含まれていない(厳密には無視できるほどに微量にしか含まれていない)。そのため、燃焼によって酸素が炭素や水素と結合できず、結果二酸化炭素も水も生成されない。木等の有機物を燃やしたときの反応式は(木を化学式で示すことは出来ないので、セルロース(C₆H₁₀O₅)を燃やしたと考えるとよいが、今回は省略して記載する)、
C、Hを含む有機物 + O₂ → CO₂ + H₂O...
一方、スチールウール(鉄)の燃焼の反応式としては、
2Fe + O₂ → 2FeO
なので、生成物は酸化鉄のみとなる。このことから、『燃焼=石灰水が濁る』とは言えないことが分かる。燃焼を取り扱う際に、この実験をやるとよいと考える。
石灰水の濁りについての詳しい内容はこちら
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※都留文科大学理科教育の一環