【概要】
サクラの木の樹液を観察し、クヌギなどの樹液との比較、考察を行う。
動画(※撮影場所は富山県高岡市)
解説
①樹液とは
木の樹皮が傷つくと、そこから液体が染み出てくる。これは導管液であり、これに篩管液が混ざったものが樹液となる。中には、樹脂や乳液などが混ざったものがある。混ざって重合等の変化が起きると脂(ヤニ)となる。乳液が出るものとしての例は、パラゴムノキやタンポポがあり、茎を切った際に混濁した白い液が見られる。樹液は乾燥すると固まるが、これは人間でいうかさぶたのように傷を保護し補修するためと言われている。
②サクラの樹液
サクラの木からも樹液が出ていたが、昆虫が集まっている様子はほとんど見られない(たまにいたりもする)。それが何故かを考えていく。まず一つ目は、粘度が高いことだ。動画でもわかる通り、染み出た樹液はたれ流れるのではなく、膨らむように固まっている。粘度が高く乾燥しやすいとみられるため固く、昆虫が食事をし難いのではと考えられる(樹液が固まる前の柔らかいうちに昆虫が来たとの情報アリ)。二つ目に、乾燥による臭いの発生の抑制が考えられる。樹液には糖分等が含まれ、これを微生物が発酵させてアルコールなどが生成、結果甘酸っぱいにおいの発生につながる。そして、この臭いを辿って昆虫がやってくる。しかし、サクラは樹液が固まってしまうのが早いため発酵が行われにくくなっているのではないだろうか。三つ目に、樹液内に糖が含まれていない場合である。樹液内には様々な物質が入っているが、特に樹脂が出てきてヤニとなり、傷を塞いでいるとも考えられる。サクラの木はコスカシバと呼ばれる虫によって食べられることがあり、それによって傷ついた部分を樹脂で保護しているため糖が無く、昆虫が寄ってこないと思われる。
③樹液の活用
有名なもので言えばメープルシロップや漆、ゴムが挙げられる。また、天然樹脂が化石化した琥珀や、香水、スポーツではハンドボールで使用する松ヤニまである。今回観察したサクラの木の樹液も、初めは透明で綺麗だが、時間が経つごとに琥珀色に変化していく。なぜそのような変化が起こるのか、粘度の変化や成分の分析、味、昆虫の寄ってくる寄ってこないの確認、琥珀作りと様々なチャレンジができるかもしれない。
樹液は詳しく扱っている所が中々無いため、追求していくと面白い発見をする事が出来るかもしれない。
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※都留文科大学理科教育の一環