ビスマスの結晶をつくる

【概要】

ビスマスを一度溶解してから放冷し、結晶かさせてカラフルな骸晶を観察する。

 

動画(※動画は都留文科大学化学実験Ⅰの一部)

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準備物

アルミ保温型、板、受け皿、ステンレス薬さじ、ペンチ、レジン、ピンセット、アクセサリー台(小)、つまようじ、UVライト、ストラップ、雑巾(軍手)、コンロ、ビスマス(150g)

 

操作手順

事前準備

  1. ビスマス入り計量器の形に合うように、アルミホイルで厚めのアルミホイル保温型を作成する。f:id:VCPteam:20220726102145j:image
  2. 一連の操作がしやすいように道具の配置を整えておく。

操作・作成

  1. ビスマス片(150g)を計量器に入れ、コンロで加熱(中火)する。f:id:VCPteam:20220726102154p:image
  2. ビスマスが完全に溶解したら、ステンレス薬さじでその表面にできる被膜をすばやく取り除く。取り除いたものは、受け皿に落とす。【※取り除く回数は1~2程度にしておくこと。ビスマス使用量は少ないので、ビスマス全量が減ってしまうので注意。この操作はしなくてもよい。】f:id:VCPteam:20220726102214p:image
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  3. 被膜を取ったら、計量器を雑巾で持ちアルミ保温型にはめてゆっくりと冷やす。【※アルミホイルで厚めの蓋を作っておくとさらに良いが、色の変化が観察できるので今回は使用していない】f:id:VCPteam:20220726102220p:image
  4. ステンレス薬さじで表面の酸化被膜を端に寄せて綺麗な光沢を観察する。約4分ほど放冷する。f:id:VCPteam:20220726102225p:image
  5. 表面の半分が固まってきたら計量器を傾け、受け皿にすべて注ぎ込む。【※熱い可能性があるので注意。その際には雑巾を用いること。焦ることは無いが、ゆっくりしすぎると固まるので注意】f:id:VCPteam:20220726102533j:imagef:id:VCPteam:20220726102235p:image
  6. 計量器を板状に戻し、上からのぞき込んで内部や表面の観察を行う。f:id:VCPteam:20220726102240p:image
  7. 手で触れる温度にまで冷えたことを確認した後、板状に叩きつけてビスマスを取り出す。f:id:VCPteam:20220726102301p:image
  8. ペンチを用いて口を広げ、内部をより観察しやすいようにする。また、アクセサリーを作るために必要なビスマス片(ビスマスチップ)を、ペンチで切り出す。f:id:VCPteam:20220726102326p:image
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  9. アクセサリー台にビスマスチップを3~4個並べてみる。f:id:VCPteam:20220726102331p:image
  10. 一度ビスマスチップをどかし、アクセサリー台にレジンを少量乗せてつまようじで全体に広げる。【※ビスマスがレジンに埋まらない程度にすること。】f:id:VCPteam:20220726102345p:image
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  11. ピンセットを用いて先ほど決めた配置に、ビスマスチップを並べる。f:id:VCPteam:20220726102351p:image
  12. 一度並べたら動かさないようにして、UVライトを用いてレジンを硬化させる。f:id:VCPteam:20220726102356p:image
  13. ストラップをつけて完成。f:id:VCPteam:20220726102407p:image
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留意点

  • 【時間に余裕がある場合】綺麗な結晶やカラフルな結晶が出来なかった場合は、受け皿に入れたものと再び合わせて再加熱し放冷...といった操作の繰り返しで再チャレンジができるが時間はその分かかる。
  • 結晶の切り口は鋭くなっているので、軍手を着用する。
  • 作品は持ち運びせずに壁に貼り付けて鑑賞する。(※結晶がはがれるおそれがあるため)
  • 受け皿に残ったビスマスは再利用が可能なので回収する。

 

解説

ビスマスについて

 美しいカラフルな光沢と特徴的な形状からブームとなっているもの。低温で溶解後、放冷して結晶化を待っていると、突然カラフルな古代の建造物のような結晶となる。ビスマスは、元素周期表83番、元素記号Biとして掲載され、反磁性(磁石に反発する)を持ち、原石は銀色の金属である。また、日本が初めて作り出すことに成功した人工元素ニホニウム(Nh)の材料に、ビスマスが用いられたことにも注目。

 

ビスマスの特徴

 融点は約272℃と低く(低い中にはスズなどもある)、加熱を止めて冷えていくのを待っていると、大小の四角形の結晶が、人口の彫り物のように階段状の形状となって成長してくる。内側に向けて深く掘り進んでいく部分があり、中身が抜けた骸骨のような結晶となっている。結晶の稜(角になる辺の部分)の成長が早いため、面が形成されるよりも先に段々が出来上がってしまうことによる。これは骸晶と呼ばれている。また、ビスマスは融解すると体積が減少する。これは、氷が水になるとき(水素結合が関係)も同じ現象を示すが、通常はこのようにはならない。

 

③表面が虹色になるのはなぜか

 結晶表面は、構造色によって虹のようにさまざまな色を放つ。これは、ビスマスが冷えていく際に、表面に形成される薄い酸化被膜の光の干渉による発色である。表面で反射される光と透明な酸化膜に入り込んだ光が特定波長の光を強め合い、被膜の厚さが微妙に違っていることで、色がグラデーションになって見える。色の変化は【銀→金→赤→黄→青→紫...】のように落ち着くことが多い。紫は薄膜でしか観察できず、色の変化は短波長に落ち着くことが多いがこれは膜の厚さによる。

 

④身近にある虹色

 シャボン玉の表面、オーロラ、タマムシ(甲虫)、オパール原石、液晶...

 

⑤実際に操作しての疑問点

 今回は低コストを実現するためにすべて少量にしているが、できた結晶は微妙であった。これは①冷却時間が短すぎた(保温できずに早く冷えてしまった)ために結晶が育たなかった、②ビスマス使用量が少なかった、③結晶をゆっくりと冷やし過ぎた(急冷するとよいとするところもある)といった原因が考えられる。次回以降は、この疑問点について検証していきたい。

 

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