今回は、キュリーエンジンを、設計して作成してみました。
動画
・準備物
ネオジム磁石 2個(直径23㎜。直径が大きなもの推奨)、針金(40㎝にカット。直径は0.45㎜。今回はステンレス製を使用。鉄製でも可。)紙コップ、工作用紙(縦13㎝、横18㎝)、ビーズ、ワッシャー(M3×8のもの)、ストロー(6㎝)、竹ひご(8㎝)、ろうそく 2本(3号【直径約1㎝、高さ約15㎝】のもの使用。芯の高さを含めないで3㎝にカットする)、カッター、はさみ、鉛筆、定規、ニッパー、おもり(今回は石を使用)、アルミホイル、ガムテープ、グラス、カッターマット
・操作手順
- 工作用紙を縦13㎝、横18㎝にハサミで切り取る。
- 針金にビーズを通し、丁度半分になるところで針金を折る。その後、針金をねじり、ビーズを固定する。さらに針金を写真の程度までねじり進める。
- 竹ひごに針金の左右を1周ずつさせ、余裕を持たせて軽く巻き付ける。(※滑らかに針金が動く程度にゆるく巻き付けること。竹ひごを動かして、ひっかからないかチェックする。しかし、ワッシャーの上に乗せても落ちないことが条件)
- 針金の先端を外側に軽く折り曲げる。
- 竹ひごを8㎝に切り取る。
- ストローを6㎝に切り取り、下部から1㎝のところまでにはさみで4カ所縦に切り込みを入れ、タコの足のように広げる。
- 工作用紙の角当たりに足を広げたストローを立て、アルミホイルで土台を作り、しっかりと固める。さらに、ガムテープで補強して固定する。(※ストローの先端は斜めになっているので用いない。もしくは平らにカットする。)
- 立てたストローに竹ひごをさして立て、ワッシャーを上から通す。
- 竹ひごに針金で作ったエンジンを通して、バランスを確かめる。傾いている場合はニッパーでカットする。(※長さが偏らないように、2本を束ねてカットすること。また、切りすぎると後戻りがしにくいので少しずつ切り詰めること。仮に切りすぎた場合は、針金の巻いてある部分を少し解くとよい。)
- 先端部分が少し下がっている(重い)状態で、先端を外側に曲げる。この際バランスがとれていなければ、先端を再びカットする。(※先端を曲げると重心等が変わるので、必ず先端が少し下がっている状態で曲げる操作を行うこと。)
- 紙コップの内側と外側にネオジム磁石をつけてはさむ。
- ネオジム磁石付き紙コップ(コップ下部から3.5㎝の高さにネオジム磁石の下部が来る高さに磁石を設置。高さは随時調節のこと)を近づけて針金を動かないようにし、上からのぞきこんでろうそくを置く地点に鉛筆で印をつける。(※針金の先端を2本のろうそくで熱するので、2本のろうそくを針金が平行になるように設置する。)
- カッターマットを敷き、ろうそくを3㎝程度にカットする。(※芯棒を含めない長さ)
- ろうそくを印の所に置き、ガムテープで仮止めをする。その後、アルミホイルで土台を作り、固めたのち、更にガムテープで固定する。
- ろうそくの真上に針金が来るようにネオジム磁石付き紙コップを近づけてセットする。その後点火して様子を観察する。動かない場合は針金の間隔や磁石の位置を調整してろうそくの火が針金にしっかりと当たるようにする。
- グラスをセットし、ビーズが当たる位置に調整する。
・留意点
- ロウソクに磁石が近いので、長時間観察すると磁石がとても熱くなるため注意。
- ワッシャーの位置やストローの長さ、竹ひごの長さを変えれば大きさの異なるエンジンを作ることが出来る可能性がある。
- 針金同士の間隔は随時調整しなくてはならない。
- グラスにビーズが当たる位置に調整する際、ビーズがギリギリ当たるくらいの方が音の響きが良い上に装置の動きに支障が出ない。動きが悪い場合はグラスにビーズが押し付けられて引っかかっている状態の可能性がある。
- 針金のバランス調整時、切りすぎてしまった場合は、新しく作り直すか、作ったわっか部分を一部解いて伸ばせばやり直しがきく。
- 使用後は磁石に触れずに火から離して冷ます。
- 今回はネオジム磁石で行ったが、フェライト磁石でもできることが確認できた。しかし、磁石と針金の距離を相当近くしないといけないので危険なうえ、磁石がとても熱くなるので非推奨。
- 長時間の使用で磁石が熱せられると、磁力が無くなり磁石として使えなくなるので注意。(自発磁化が低下。ネオジム磁石のキュリー点は540℃程)
どうして針金が動くのか
①動く原理について
針金が動く理由には、キュリー温度が関係している。鉄など磁石につくものを磁性体(強磁性体)といい、その磁性体は温度が上がるにつれて磁力が低下していく。そして、ある温度に達すると磁力を失うが、これをキュリー温度(キュリー点)と呼ぶ。
キュリー温度に達した針金は磁力を失い、ネオジム磁石に引き寄せられなくなる。すると、もう片方の磁力を失っていない針金が磁石に引き寄せられ、動いてきた針金は熱せられて磁力を失う。その間に熱せられていた針金は冷やされて磁性を取り戻して磁石に引き寄せられ…といったことを繰り返しながら動くといった仕組みとなっている。
②針金の磁力が低下するとは?
磁石はものを引き寄せるが、引き寄せない針金にも磁力は存在するのだろうか。実は、針金内部には、磁石と同じS極とN極が存在している。しかし、極の方向がばらばらなため、磁石としての性質が現れない。しかし、外部から強い磁力が加わると、バラバラであった極がそろうので、磁石にくっついたり引き寄せられたりする。
【針金の内部の様子拡大イメージ図】
しかし熱せられて温度が高くなると、熱振動の影響で針金内部の極の向きが乱れ始める。すると磁石に引き寄せられる前の状態に戻ってしまい、磁石に引き寄せられなくなってしまう。逆を言えば、温度が低いほど磁気モーメントの熱揺らぎが小さくなる。そのため、絶対零度で、強磁性体の磁力は最大となる。
強磁性体や自発磁化、常磁性などについて調べてみると、更に今回の原理や仕組みについての理解が深まる。
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※都留文科大学理科教育の一環