生クリームからバター作成! ~レモンを加えて時短~

今回はバターを作ってみました。

 

動画

youtu.be

 

・準備物

生クリーム(乳脂肪分35%)100ml、レモン半分~2/3個(レモン汁20~30mlほどあるとよい)、ビーカー、ペットボトル(280mlサイズ)、トレー、カッターナイフ、はさみ、布、スプーン

 

・操作手順

  1. レモンを絞って得られたレモン汁と生クリームを、ペットボトルに入れる。
  2. しっかりと蓋をして、布で体温を伝えないようにしつつ、ペットボトルを持って振る。
  3. 水音が一度消え、再び水音が聞こえてきたら、トレー上でカッターナイフで切れ込みを入れ、更にはさみを入れてペットボトルを半分に切り開く。(※カッターナイフで切れ込みを入れる際はペットボトルを横に、その後はペットボトルを立てながらはさみで切る)
  4. スプーンで中身を取り出して様子を観察する。

 

・留意点

  • 刃物を扱う際はケガに注意する。
  • 温度が高いとできない場合がある。実験時には、生クリームを良く冷やしておき、体温を伝えないように気を付ける。
  • 生クリームは今回使用した乳脂肪分のものを推奨。
  • 今回はレモンを加えるので、味はレモンの風味が残る。純粋なバターを作りたい場合はレモンを加えずに作るとよい。しかし、時間が相当かかる上にペットボトルを振り続けなくてはいけない。残った液体も、酸味がある分ヨーグルト風味。残った液体については後述。
  • 一度水音が消える際、固まり始めでボトルがとても重く感じる。この段階になると暫くは力強く振らなくてはいけない。
  • 無塩バターのため、無塩クラッカーと合わせるととても美味しい。

 

・固まる仕組み 

 牛乳よりも脂肪分が多い生クリームを用いた。生クリーム中には、脂肪がタンパク質の膜で包まれた乳脂肪球として分散している。乳脂肪球は一定の大きさを持つコロイドで表面電荷をもっているが、同じ電荷同士が磁石のN極とS極のように反発し合って溶液中に安定して分散している。そこに振動を加えると、包み込んでいる膜が壊れて脂肪が出てくる。そして、出てきた脂肪が集まり大きな塊を作って分離していくという原理である。また、静電気的な中和も関係している。実は、冷蔵庫の扉の振動でも固まることがあるとか…

 今回は酸を加え、より反応を促進している。これはいわゆる「塩析」と呼ばれるものである。

【生クリームの初めの状態】

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【振ると、膜が破れて脂肪同士がつながり始める】
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【脂肪同士がつながって間に空気や水分が入っている状態→ホイップクリーム(下図の実写写真がその状態)】
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【さらに振り続けると、空気や水分が離れて脂肪同士がさらにくっつきバターになる】
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塩析関係の記事

vcpteam.hatenablog.com

 

・出てきた液体について

 バターが完成すると、液体が分離する。これは「バターミルク」といって、栄養価の高い液体である。そのまま飲む他、お菓子作り等にも用いることが出来るため、バター作りには無駄がない。しかし今回は酸を加えているので、「酸性バターミルク」になると思われる。チーズ作成時のホエイと似ている。

 

・バターが黄色い理由

 初めは白っぽい生クリームだが、バターになると黄色くなる。これはなぜなのか。脂肪分が分離してくるので、乳脂肪本来の色が出てくるため黄色っぽくなるが、実はカロテンがその色を出している。乳脂肪球は光を乱反射するため初めは白く見え、その膜内にカロテンは含まれている。そのため、膜が破れることでカロテンが出て黄色くなる。カロテンはウシが食べるものに含まれており、食べるものによって黄色っぽさは大きく変わる(乳脂肪分の比率も関係あり)。

 また、バターを空気と触れさせた状態にすると、表面の黄色が濃くなるように見える。それは、バター表面の水分が蒸発し水粒子が減少することで黄色の光の反射量が増えるためと思われる(邪魔をする水の膜が無くなったイメージ)。

 

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都留文科大学理科教育の一環

 

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