【概要】
酢酸ナトリウムの凝固の際に発生する熱を利用したカイロを作成した。
動画(※動画は都留文科大学化学実験Ⅰの一部)
・準備物
無水酢酸ナトリウム 10g、温度計、ビニール袋(厚めチャック付き袋:ダイソー製50×70)、ヘアピン、100mlビーカー、水、ガムテープ
・操作手順
- ビーカーに無水酢酸ナトリウムを量りとる。
- 水10gを加えた後、穏やかに加熱して温度計を用いて完全に溶かす。(※加熱は75℃まで)
- 60℃になるまで静置し、放冷する。
- チャック付きビニール袋にヘアピンを入れておく。そこに60℃に冷えた無水酢酸ナトリウムを入れる。その後、チャックを閉め、更にガムテープで口をしっかりと塞ぐ。
- さらに放冷する。もしくはビーカーに冷水を入れ、その中で冷ます。(※冷水で冷ますときは結晶化する可能性があるので注意すること)
- 冷えたら、内部のヘアピンを解除して刺激を加え、様子を観察する。また、実際に触れてみる。
- もう一度実験を行いたい場合は、ビニール袋を水中に入れた状態で加熱し、無水酢酸ナトリウムを熱で溶かせば可能。(※袋が溶けるほどに高温にはしない)
・留意点
- 結晶が出ないように60℃近くで袋に酢酸ナトリウム溶液を加えるが、火傷に注意。
- 袋が薄手のものであると、ヘアピンを動かしたときに袋に穴が開く可能性があるので注意。
- 結晶が見られない可能性がある。ただ、刺激を加えてから少しして結晶化が起こることもある。
原理
無水酢酸ナトリウムを加熱しながら水に溶解させ、その後冷却する(溶解時に吸熱する)。温度が低下してきて溶解度に達するが、すぐに結晶は析出してこない。溶解度を超えてしばらくは水溶液の状態で過飽和の状態を保つ。しかし、結晶粒や物理的な振動によって、その状態が破られ(ブレイク)、一気に結晶化が進行する。その際に結晶の凝固熱の発生が見られる。反応式は、
CH₃COONa + aq = CH₃COONaaq + 39.5kJ (aq=アクア、多量の水)
この熱を保温材(カイロ)として利用し、加熱して再利用を繰り返すことが出来る便利グッズも開発されている。また、放射状に結晶が広がるのだが、低濃度であればゆっくり綺麗な針状結晶が見られるのだとか。濃度調整によって反応速度を変えられるのは面白いかもしれない。ただ、加熱のエネルギーと発熱のエネルギーが釣り合っている(±0でエコ)かは...
突然の結晶化には過冷却がある。今回の無水酢酸ナトリウムについても同じである。過冷却とは変化するべき温度以下でも状態が変化しないこと(今回は液体から固体になる状態変化が、凝固点以下の温度になっても起きないこと)だが、この状態時に刺激や結晶核になるものが加わることで、そのエネルギーによって爆発的に反応、凝固が始まる。酢酸ナトリウム以外にも水を用いた過冷却の実験(難度は高い)があるのでトライしてみてほしい。
孔雀の羽のように見えるので写真を…
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※都留文科大学理科教育の一環