酢酸ブチルエステルの合成

【概要】

エステルの合成を行う。

 

動画(※都留文科大学化学実験Ⅰの一部)

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・準備物

スタンド、ガスバーナー、三脚台、500mlビーカー、試験管A(200×32㎜、太め、乾いていること)、試験管(B~D用) 3本、温度計、酢酸 3ml、1-ブタノール 5ml、濃硫酸 1ml、沸騰石 3粒、還流管(60㎝ガラス管4-6㎜、シリコン栓7号)、炭酸水素ナトリウム粉末 3g(追加する可能性があるので3g以上必要)、ガラス棒、ろ紙片、ヨウ素 1粒、水 5ml、薬さじ、薬包紙

 

・操作手順

  1. スタンド、ガスバーナー、湯浴用500mlビーカー、試験管A(200×32㎜)、温度計をセットする。試験管の下部が十分につかる程度の水を加えて湯浴とする。(※加える水は400ml、温度計は試験管の近くにセットする。)f:id:VCPteam:20220607220919p:image
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  2. 酢酸3ml(試験管B)、1-ブタノール5ml(試験管C)、濃硫酸1ml(試験管D)を量りとる。
  3. 沸騰石3粒を試験管Aに入れた後、更に試験管B・C・Dの物質を加える。試験管Aは、いったん装置から外してよく振り混ぜておく。ここで駒込ピペットは使わず、試験管B~Dは洗浄せずに試験管立てに置いておく。
  4. 試験管Aに還流管(60㎝ガラス管4-6㎜、シリコン栓7号)をしっかりとつけて、湯浴中のビーカー中央に固定する。(※ゆっくり加熱し、突沸を防ぐ。しかし、今回は反応が進まなかったので直火で加熱。温度は約90℃近く。ただし、様子を見ながら行うこと)f:id:VCPteam:20220607220942p:image
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  5. 加熱して湯浴を約70℃とし、5分程度維持する。還流管に昇ってくる反応物の様子を見ながら温度調節する。
  6. 湯浴とガスバーナー、還流管を外す。試験管本体はそのまま維持。
  7. 炭酸水素ナトリウム粉末3gを少しずつ加える。発泡が見られなくなるまで、炭酸水素ナトリウムを適宜追加していき、発泡が落ち着いたら水5mlを加える。
  8. 上層に分離してきた成分をガラス棒に付着させ、ろ紙片につけてそのにおいを嗅ぎ、原料の酢酸やブタノールの入っていた試験管の臭いと比較する。
  9. 試験管Aにヨウ素を1粒加え、変化が起こるまでよく振り混ぜる。

 

・留意点

  • 還流管は長いので扱いに注意。運ぶときは縦に持ち、胸の近くに持つこと。→洗浄せずに返却
  • その他の使用ガラス器具は洗剤で洗浄。
  • 生成したエステルは有機廃液として回収。
  • 引火に注意する。

 

解説

エステル化

カルボン酸 R-COOHとアルコール R-OHは、脱水縮合反応によりエステル結合をつくる。エステル分子内のエステル結合 -CO-O- は、エステル結合として官能基の一種として扱われることもある。

【反応式】

R-COOH  +  HO-R  →  R-COO-R + H2O

カルボン酸  アルコール     エステル

 

エステル化合物

エステル化によって分子量が大きくなり、融点・沸点、水溶性などの性質が大きく変わることが多い。強い芳香を持つことが特徴的で、天然には無数のエステルが存在する。

 

③一般的な合成方法

容器内で、カルボン酸R-COOHとアルコールR-OHを混合させ、濃硫酸(触媒としての働き)とともに加熱することでエステルを生成する。反応は、平衡状態になるため、分液ろうとを用い、未反応の物質や硫酸と分離する方法をとる。例えば、カルボン酸と硫酸は、炭酸水素ナトリウムを用いて中和することで水溶性の塩として分離することができる。

R-COOH + NaHCO3 →R-COONa + H2O + CO2

H2SO+ 2NaHCO3 → Na2SO4 + 2H2O + 2CO2

中和の完了は、二酸化炭素の発生(弱酸の遊離)の終結で確認できる。さらに、どちらかの成分をあらかじめ少なめに設定しておくと、反応効率(収率)の算出が可能。また、アルコールは、水溶しにくいものであれば、あらかじめ少なめにし、ややカルボン酸を過剰に設定しておく。その場合、反応効率の算出(反応収率)は、アルコール量が基準となる。(どちらかを1として、片方を多めに設定する)

R-COOH  + HO-R    → R-COO-R + H2O

カルボン酸  アルコール   エステル

(やや過剰)  (基準)    (反応収率)

 

④残るもの、色の変化、香り

最終的には綺麗な2層に分かれるが(炭酸水素ナトリウムを入れ過ぎていると、炭酸水素ナトリウムが残って3層に見えてしまう)、上層は油(エステル)、下層は要らないもの(水や塩)に分かれている。

また、上層に色がつくのは、ヨウ素は無極性であるため、油に溶けて色が付いた。

芳香は水で希釈するとラフランスのような香りに感じたが、実際はバナナに近いそう。水でさらに希釈していくと分かりやすいかもしれない。(希釈しないと有機溶剤のような香りに感じる...)

 

⑤還流管の役割

1.反応物の濃度を一定に保つ

2.揮発性成分への引火防止

が挙げられる。特にガスバーナー等を用いるので、引火をしないように長くなっている。また、加熱をしていると還流管に物質が上がってくることがあるが、その時ガラス管が長くなければ噴き出してしまい、被害が出てしまうため長さは必要なのである。

 

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