フルオレセインの合成 蛍光物質の性質

【概要】

フルオレセインの合成を行い、蛍光物質の性質について学ぶ。

 

動画(※都留文科大学化学実験Ⅰの一部)

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準備物

薬包紙、無水フタル酸 0.2g、レゾルシノール 0.3g、濃硫酸 0.5ml、ガスバーナー、ガラス棒、無水エタノール 1ml、黒い紙、UVライト(100均ブラックライト)、水酸化ナトリウム水溶液 5ml、純水、1ml駒込ピペット、試験管ばさみ、ガスライター、メスシリンダー

 

操作手順

  1. 薬包紙に無水フタル酸0.2gとレゾルシノール0.3gを秤量する。
  2. 両試薬を試験管に入れて混合する。
  3. 濃硫酸を1ml駒込ピペットで0.5mlとり(1ml吸い取ってから0.5ml滴下すると綺麗に測りとれる)、更にそこから混合物の入った試験管へ濃硫酸を2滴加える。
  4. 試験管ばさみで混合物入り試験管を持ち、ガスバーナーで加熱する。(※褐色になる程度で焦がさないようにする。褐色への変化は早いので注意。)
  5. ガラス棒を用いて褐色物の一部をとり、エタノール入り試験管へ溶解させる。(※試験管上部にガラス棒がふれて、フルオレセインが付かないように注意する。)
  6. 溶解させた後、その液を試験管2本に分け、純水を加えて全量を各5mlとする。
  7. 部屋を暗くし、試験管の一方のみの背景を黒い紙で暗くしておき、上方からUVライトを照射する。
  8. そこに水酸化ナトリウムをゆっくり滴下していきつつ、横から観察する。

 

留意点

  • 少量で大量に生産できるので、使用量はごくわずかでよい。
  • 加熱は数十秒でよい。それ以上すると色素が分解されてしまう。
  • フルオレセインの合成に使用した試験管は回収する。→教員が洗浄。
  • 観察時には、適宜照明の調整を行う。
  • 試験管を大量に使うので本数をよく確認して最小限の使用量になるようにする。
  • 使用するガラス棒などを置いておく試験管の用意をしておく。
  • 濃硫酸を使用するので扱いに注意する。

 

解説

①光る『蛍光物質』とは

 物質の中には紫外線を吸収し、波長を可視光に変換して放出するものがある。その物質が光を放って輝いているように観察される現象を蛍光と呼ぶ。紫外線を照射しているうちには光って見えるが、照射を停止するとたちまち光を放たなくなる。

 

②フルオレセインの合成

 フルオレセインは、強い黄緑糸の蛍光を発する物質として様々な用途に活用されている(染料などにも使われるとか)。ジカルボン酸と二価アルコールであるレゾルシノールによるエステル化反応によって合成される。f:id:VCPteam:20220618152106j:image

 また、フルオレセイは水酸化ナトリウムのようなアルカリ性水溶液下では、次のように電離して安定する。f:id:VCPteam:20220618152117j:imageこの状態で紫外線を吸収すると強い蛍光を発する(塩基性で蛍光を発するようになる。フェノールフタレインに似た構造。もしかするとフェノールフタレインも蛍光を発する?)。逆に酸性状態ではあまり蛍光は観察できない。さらに、色にも変化がある。アルカリ性寄りではフルオレセイの色は緑っぽいのに対し、酸性寄りでは黄色っぽくなる。(もしかすると、pH測定に使えたり...?)濃硫酸は、脱水縮合反応によってエステルを作るために使用。f:id:VCPteam:20220618152126p:imagef:id:VCPteam:20220618153250p:image
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 照射角度がπ/2になるようにすると強い蛍光が見られる。混合物の加熱時だが、横から見ると褐色の物質が出来ているのに対し、上から試験管内部を見ると透明に見える。油分の面が全反射しているのかなんなのか疑問が残る。f:id:VCPteam:20220618152230p:imagef:id:VCPteam:20220618152216p:image

 

蓄光との違い

 傾向と似ているが、光エネルギーの放出がゆっくりと行われるため、紫外線照射が停止した後も発光が持続されるものが蓄光である。かつては放射性物質を混ぜた塗料が時計版の文字に用いられたことでも知られる。現在は、硫化亜鉛(ZnS)や希土類が用いられた安全な素材が開発されている。

 

④不思議な蛍光の仕方

 通常であれば次の画像のように光るが、当て方を変えると蛍光を示しつつも不思議な輝き方をする。f:id:VCPteam:20220618153214p:image

 次の画像を見ると、UVライトを当てる角度を変えると、全反射のような光の道筋を確認することが出来る。f:id:VCPteam:20220618153236p:image
f:id:VCPteam:20220618153229p:image実際に観察すると、渦を巻くような形で光が昇っているように見えるため、全反射とは少し違うのか?とも思われる。ただ、試験管の曲がった側面に反射していたりもしくは曲がった側面で曲げられている結果とも考えられるため、研究を続けたい項目。

 

⑤何故濁ったのかについて(失敗バージョンの結果の考察)f:id:VCPteam:20220618152156p:image
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 通常であれば、水で希釈すると綺麗な黄緑色が見られるが、今回は初めに失敗しオレンジジュースのような混濁した溶液が得られてしまった。その原因を考察してみる。

 

①フルオレセインをエタノールに溶かし過ぎた→【これは、フルオレセインの溶解度が低いとして考える。エタノールにはかろうじて溶けるとしても、それを希釈するほどの水を入れた場合、エタノールの濃度も変化する。そのためフルオレセインの溶解度が低下し、溶けきれないフルオレセインが析出してきたと考えられる。フェノールフタレインも同様な内容で白濁が見られることがあることから、可能性があると思われる。こちらの動画〔

フルオレセインの希釈 - YouTube

〕を見てみると、薄め初めはフルオレセインの色が観察出来ている。しかし段々と濁っていっている。そのため、エタノールを加えるとよかった?】

 

②水道水を使用した→【初めに水道水を使用してしまった。これは、水道水に含まれる塩化物イオンが関係していると考えられる。水酸化ナトリウムを加える前なので電離して安定している形とは違う。そのため、端の酢酸イオンと塩化物イオンが反応して塩の形成が起こったのではないかと考える。モール法でも似たような色変化があるので可能性はあり。】

 

③混合物の加熱時に焦げていた。→【褐色への色変化は中々早い。そのため、どの程度でやめるべきか迷った結果、焦がしていたのではないかと推察する。そのため褐色の色が強く残り、濁ったような液体になったのか...】f:id:VCPteam:20220618152205p:image
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【下の画像のように赤みがかった褐色、焦げ茶色ならOK】
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④もっと水を入れれば良かった→【希釈すれば色味が薄くなり正しい結果を得られたかもしれない。可能性はあるが濁っているので上手くいくかは怪しい。】

 

 水を加えた際になったこと、後でエタノールに少量フルオレセインを溶かしてから希釈したら上手くいったことから①の考察があっているように思われる。しかし、後の希釈時に使用した水は純水であったので、水質の面も否定できない。また、加熱のし過ぎも十分に考えられる。(褐色というよりはべっこうをさらに黒くした風に見えたし...?)

 

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