今回は葉緑体が赤く光るか観察してみました。
動画(※動画は都留文科大学理科教育法の模擬授業の一部)
・準備物
のりの色を確認する実験【生徒操作可能】
きざみのり、試験管 2本、無水エタノール 10ml、水 10ml、ブラックライトペン、試験管立て、駒込ピペット、割りばし、500mlビーカー、温度計、ガスコンロ、ろうとがわりの紙、ポット(お湯があれば加熱時間の短縮になるため)
ほうれん草の色素抽出【今回は演示実験】
ほうれん草(葉を4~5枚にちぎる)、無水エタノール 50ml、アルミホイル、100mlビーカー 2個、ステンレス皿、ガスコンロ、ろ紙、ろうと、ガラス棒、試験管
・操作手順【のりの実験】
- 試験管にのりを適量取り入れ、紙を丸めてろうとのようにしながら試験管内へのりを入れる。その後、割りばしで試験管の底にのりを押し固める。これを2つ用意する。
- 駒込ピペットを用いて、片方には無水エタノールを10ml、もう片方の試験管には水を10ml注ぐ。(※のりと水が混ざらないようにゆっくり注ぐ)
- 500mlビーカーに水を300mlほど注ぎ入れ、試験管2つをそこに入れたのち、約70℃で湯煎する。この際、温度計で500mlビーカー内の水の温度を確認し、72℃になったら加熱を止める。
- 試験管を取り出し試験管立てに収めたのち、それぞれにブラックライトを照射して、観察する。
・操作手順【ほうれん草の実験】
- ほうれん草の葉を4~5枚に細かくちぎり、100mlビーカーに入れて無水エタノールを50ml注ぎ入れる。
- ビーカーにアルミホイルを被せて蓋をする。(※引火防止のため)
- ステンレス皿に水を入れ、ガスコンロで加熱しながらほうれん草入りビーカーを湯煎する。湯煎時間は約5分間。
- 葉から泡が出なくなったら、ビーカーを湯から出し、試験管へとろ過する。
・留意点
- 無水エタノールは引火しやすいので、取り扱いには十分注意すること。
- 火傷に注意する。
- ブラックライトの光を直接見ることはせず、試験管に光を当てる際は視線に対して直角に、横から当てること。
赤く見える理由としては、クロロフィルが関係していると思われる。クロロフィルは光を受け取ると光化学反応が起こり、反応中心へ、光を受け取り励起状態となった光合成色素がエネルギーを伝達していく。いわば光合成が行われる。しかし、加熱し色素を抽出したことによって、光エネルギーを受け取っても伝達する相手及び反応中心が隣にいない状態になっている。(細胞が破壊され、光合成回路のパーツが溶液中にばらばらになったイメ―ジ)エネルギーを持った励起状態は不安定であるので、基底状態へ戻ろうとエネルギーの放出が行われるのだが、その放出されたエネルギーが赤い光となって見えているのである。受け取った光は紫外線だが、放出する光は波長が長くエネルギー量が低い赤色になっている。
クロロフィルは赤や青色の光を吸収し光合成を行う。一方緑色の光は反射しており、その反射された光が目に入ることで、葉は緑色に見えている。
ほうれん草は陸上に生息しているのでクロロフィルを多く持つが、海苔は海水内に生息しており、陸上より光量が少ない。そのため、海苔は、クロロフィル以外にもフィコブリンという色素を保有しており、普段は反射してしまう緑色の光をフィコブリンが吸収し、光合成の効率を上げている。フィコブリンは赤っぽい色素なので、海藻の中に赤いものがあるのはこのフィコブリンをかなり多く含んでいるからと思われる。
水ではなくエタノールを入れた試験管が赤く光ったのは、クロロフィルはエタノールには溶けやすいためである。一方水を入れた方は黄色っぽく見えると動画内で言っているが、フィコブリンが抽出されているためそのような色に見えるのではないかと推察する。
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※都留文科大学理科教育の一環