【概要】
セバシン酸ジクロリドとヘキサメチレンジアミンを用いてナイロンを合成する。
動画(※都留文科大学化学実験Ⅰの一部)
準備物
セバシン酸ジクロリド 1.5ml(50mlビーカーに取る【A液】)、ヘキサン 17ml(試験管にとる)、ガラス棒、ガラス棒用試験管(短)、水酸化ナトリウム水溶液(1㏖/L濃度) 20ml(50mlビーカーにとる【B液】)、ヘキサメチレンジアミン 0.7g(薬包紙に取る)、フェノールフタレイン試薬、ピンセット、アセトン 20ml(100mlビーカーに取る)、セロハンテープ、乾燥用土台(シャーレや紙等使う場合のみ)
操作手順
【A液の調整】
- セバシン酸ジクロリド1.5mlを50mlビーカーに取る。
- 試験管にヘキサン17mlを取り、セバシン酸ジクロリド入りのビーカーに注ぎ込む。ガラス棒を使って溶かしこれをA液とする。→ガラス棒は試験管(短)にさして立てておく。
【B液の調整】
- 水酸化ナトリウム水溶液(1㏖/L)20mlを50mlビーカーに取る。
- ヘキサメチレンジアミン0.7gを薬包紙に取り、水酸化ナトリウム水溶液入りのビーカーに入れて軽く振り混ぜて溶かす。
- フェノールフタレイン試薬を数滴加えておく。
【ナイロンの合成】
- A液作成で使用したガラス棒を使い、壁面に沿ってB液へA液をゆっくりと注ぎ入れる。(※一気に混ざらないようにゆっくり行うこと)
- 界面にできたナイロン繊維の端をピンセットでつまみ上げ、ガラス棒の端に巻き付けてゆっくり巻き上げていく。
- 溶液が無くなるまでナイロン繊維を巻き上げる。その後、水道水にさらして洗う。
- アセトン20mlを100mlビーカーに取り、ナイロン繊維をほぐして洗う。洗った繊維は紙の上などに伸ばして風乾させる。
- ナイロン繊維をテープなどでプリントに張り付ける。
留意点
- 色が分かりやすいように、二層が確認しやすいようにフェノールフタレインをしっかりと使う。
- ナイロンは乾かない内はちぎれやすいので、無理にガラス棒から外そうとしたりはしない。
- 各液が手についた場合はせっけんで手を洗うこと。
- 使用ビーカーとガラス棒は洗剤で洗うこと。
- ナイロンの廃棄は各自治体の処理。燃えるゴミへ。
解説
①脱水縮合が起こる
基本はカルボン酸とアミンのエステル脱水縮合反応である。構成骨格の炭素鎖の端にそれぞれの官能基があるため、多数の分子間で縮合が起こる。直鎖上の巨大分子鎖となって連なる繊維を構成するところが特徴的。カルボン酸としてアジピン酸、アミンにはヘキサメチレンジアミンを用いた場合、それぞれの炭素鎖の炭素数は6個と6個になるため、生成物は『6,6‐ナイロン』を呼ばれるようになった。
[CO-(CH₂)₄-CO-NH-(CH₂)₆-NH]n
ナイロンは、長い鎖状分子のアミド結合間で水素結合が働き、適度な強度と伸縮性、弾力性、速乾性等優れた性質を持ち合わせている。事実、細い糸でボールペンを軽々持ち上げた。
②世界初の合成繊維
ナイロン(nylon)は、ポリアミド合成樹脂の種類で、世界初の合成繊維ナイロン6,6が良く知られている。これは、1935年アメリカのデュポン社のウォーレンス・カロザースが、生成物に手を伸ばして糸状に作り上げる方法を工夫し、天然の絹に代わる繊維の合成に成功した。商品としては、女性用のストッキングに用いられ「鋼鉄よりも強く、クモの糸より細い」というキャッチフレーズを生んだ。その後の化学繊維産業の興隆に大きな業績となったが、発明者のカロザース自身は当初はそれほど優れた性質は持っていないと考えていたというエピソードも残されている。
③アジピン酸とヘキサメチレンジアミンの反応式
④アジピン酸ではなくアジピン酸を用いる理由
発明当初の方法では加熱が必要であった。しかし、ハロゲン置換体を用いると常温で反応が可能となるため。また、水酸化ナトリウムを入れてあるので、塩酸が中和で抜けることで結合が起こる。このことにより常温での反応が可能である。詳細は図へ。
⑤アジピン酸・ヘキサメチレンジアミン・水分子等を記号で表したときのナイロンの分子量を考える
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※都留文科大学理科教育の一環