葉脈標本の作り方
【概要】
葉肉を外し、葉脈を観察できる標本を作る。
動画
・準備物【3人グループ想定】
500mlビーカー、水酸化ナトリウム 25g、ヒイラギモクセイなど肉厚種の木の葉 10枚程度、沸騰石 2粒、温度計、ピンセット、トレイ、歯ブラシ、水、コンロ、フェノールフタレイン指示薬、保護めがね、使い捨て手袋、ピンセット、キッチンペーパー
・操作手順
- 手袋をし、500mlビーカーに水酸化ナトリウム25gを入れ、更に水を加えて全体を250mlにする。
- ヒイラギモクセイ葉を水酸化ナトリウム水溶液に入れて、沸騰石2粒を入れた後、温度計を用いて加熱する。(※約20分間80℃に保つこと)
- ピンセットを用いて葉を一枚トレイに取り出し、流水にさらして水酸化ナトリウムを流し去る。さらに、歯ブラシを用いて葉肉が容易に取り除けるかを確認する。(※葉肉がとりにくい場合は、更に加熱を継続する。取り出した葉は水気を取った後戻すか、廃棄処理をする)
- 3.の確認が済んだら、ピンセットで全ての葉をトレイにピンセットで写し、流水に十分にさらして水酸化ナトリウムを流し去る。(※水酸化ナトリウムが完全に流しされているかを、フェノールフタレイン指示薬をトレイに滴下して確認する。色が付かなくなるまでしっかりと洗い流す。)
- 手袋を外し、水を流したトレイ上で歯ブラシを用いて葉肉を取り除く。水に浸しながら葉肉を洗い落としつつ、細かく叩くように取り除いていくとよい。(※力でこすり落とそうとすると葉脈がちぎれてしまうので注意)
- 水でしっかりと洗い流した後、キッチンペーパーで水気をしっかりととる。
- 乾いたら観察する。
- 【発展】余裕があればパウチに入れ、ラミネート加工し、しおり作りを行う。(好みで絵の具やマーカーで葉脈に着色するのもよい)
・留意点
- 水酸化ナトリウムを用いるので、手で触れるときや加熱時には注意を払い、保護メガネと手袋を必ず着用する。
- 温度計は80℃に達したことを確認できれば良いので、確認後はすぐに洗浄してしまう。
- 葉脈は破れやすいので、歯ブラシで叩き過ぎないこと。
- 水酸化ナトリウム廃液は指定容器へ廃棄する。
しおり作成はこちらの記事を参照
原理
①葉肉のみが残る理由
水酸化ナトリウムは強塩基性を示す。そのため、植物組織の一部を溶かしたり柔らかくする働きがある。(ミカンの皮むきや野菜のあく抜き時に炭酸水素ナトリウムを用いるのと同じ原理)
葉の大部分である葉肉を構成する成分の内、細胞膜部分のタンパク質とリン脂質は加水分解されて溶けだし、細胞同士をつなげて安定させるペクチン質も分子内のカルボキシ基との酸塩基反応により水に溶解しやすくなる。
一方、葉脈(今回残った部分)は、アルカリに解けないセルロースやリグニンが堅固に結びついて安定した構造を保っている(木化)ので、葉肉が溶け去った後に、骨組みのような筋だけが残る。
水素ナトリウムは水に溶けて強い塩基性を示す。(NaOH → Na⁺ + OH⁻)そして、タンパク質を加水分解する。 ([HN-▢‐CO]n + NaOH → n[H₂N-▢‐COO⁻-Na⁺]) ▢:様々な分子骨格部の省略形
②材料のヒイラギモクセイ
材料のヒイラギモクセイの葉は、特にしっかりとした葉脈を持ち、その構造を観察するのに適した教材だ。葉脈は、細胞に必要な水や養分を供給したり、生産された光合成産物を送り出す役割を持ち、動物でいえば、血管に似た機能を持っている。また、葉を水平に広げて支える強固な構造は、光合成の効率を高めるのに都合が良い。葉脈は、茎とつながる葉柄の部分から始まり、葉の端に向かって細かく枝分かれして網状となっている。ルーペで観察すると、全体の構造と個々の小さな部分が自己相似形を繰り返す、いわゆるフラクタル構造をしていることがわかる。生物が生命活動をする上で、有効な構造をとっている結果なのだろうが、自然の造形美を楽しむことができる。
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※都留文科大学理科教育の一環