【概要】
無水酢酸ナトリウムを用いて、繰り返し利用可能なカイロを作る。また、凝固熱について学ぶ。
動画
・準備物【3つ分の分量】
無水酢酸ナトリウム 30g、水 30g(1:1の比率)、コンロ、100mlビーカー 2つ、300mlビーカー、電子天秤、ガラス棒、ヘアピン 3つ、チャック付きビニール袋 3つ、お湯
・操作手順
- 無水酢酸ナトリウム30g、水30gを100mlビーカーに電子天秤で量りとる。
- コンロで加熱し、ガラス棒を用いて無水酢酸ナトリウムを完全に溶解させる。
- チャック付きビニール袋にヘアピン(閉じた状態)を入れておく。
- 無水酢酸ナトリウム水溶液が透明になり、袋が溶けない温度(60℃くらい?)まで冷めたら、チャック付きビニール袋に無水酢酸ナトリウム水溶液を袋の半分以下まで入れる。
- 空気を抜いてチャックを閉じる。
- 冷水(水道水)を入れた100mlビーカーに、チャックをした袋を入れて粗熱をとる。
- ある程度冷めたら冷水から取り出し、内部のヘアピンを開いて刺激を与える。(※取り出すときは刺激を与えないように注意!)
- 【再利用実験をする場合】300mlビーカーにお湯を沸かし、結晶が出た無水酢酸ナトリウム水溶液を袋ごとお湯につけて溶かす。この際、袋が溶けないように注意する。
- 無水酢酸ナトリウムが溶けたら冷まし...6.~8.を繰り返す。
・留意点
- 凝固が見られない場合もあるので、バックアップに複数個用意するとよい。
- 袋が溶けない温度になったらすぐに入れること。冷まし過ぎるとビーカー内部で結晶化が進んだり、結晶化が見られない可能性がある。
- 袋は厚手のものを推奨。薄手だと、耐熱性が低く穴が開いて溶液が漏れる可能性がある。
原理
①結晶化のメカニズム
冷凍庫の中で一定時間置いたドリンクをカップに注ごうとしてキャップを外したとたん、突然凍り出してしまうという、いわゆる「過冷却」と同類の現象(有名なものではフローズンコーラ)。一般に、水に溶解しやすい物質の溶解度は、温度上昇に伴って大きくなるものが多い(ミョウバンが良い例)。溶解度に達した飽和溶液をそのまま冷却していけば、その温度の溶解度に応じた余分な結晶がすぐにでも析出してきそうだが、いったん溶解させた物質は、溶解度を超えた状態でもなかなか結晶が析出せず、一時的に過飽和の状態になる。溶解している成分は、水のような溶媒分子に取り囲まれて安定しているため、結晶が析出し始めるためには、一定の刺激(エネルギー)が必要となる。そこで、少し物理的な衝撃を加えてやると一気に結晶化(ブレイク)が進行する。逆に言えば、水溶液中に析出のきっかけ(トリガー)になる不純物(チリやゴミ、溶け残り等)がもともと多く含まれていると、過飽和の状態が維持されにくくなる。そこで、トリガーになりそうな不純物をあらかじめろ過などして取り除いておくと、それだけエネルギーが高まったところから劇的なブレイクを観察することができる。
②熱の発生
このブレイクによる劇的な結晶析出には、大量の熱の放出を伴う。これは、結晶核の投入によって溜まっていたエネルギーが一気に解放されるからである。この酢酸ナトリウムを封入し、融解と凝固を繰り返すことで再利用可能となる発熱体が「エコカイロ」として販売されている。そのビニールの容器内部には、トリガーとなる金属片が入っていて、それを刺激すると凝固が始まり凝固熱が...
CH3COONa + 3H2O = CH3COONa・3H2O + 39.5 kJ
【凝固する様子】
他の解説はこちらの記事を参照
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※都留文科大学理科教育の一環