酸化カルシウムの反応熱でウズラの卵の目玉焼き作り

【概要】

酸化カルシウムが水に溶解する際の熱の発生を確認する。

 

動画(※動画は都留文科大学化学実験Ⅰの一部)

youtu.be

 

・準備物

アルミホイル(約30×30㎝角)、200mlビーカー、酸化カルシウム 25g、うずら生卵、ぬるま湯 約35ml、フェノールフタレイン指示薬、爪楊枝やシャープペンシル

 

・操作手順

  1. アルミホイルを用いて、ビーカーに被せる用のふたと、生卵用の受け皿を作る。また、ふたには爪楊枝などを用いて小さな蒸気穴を作っておく。(※特に受け皿は、ビーカーにセットしてみて大きさが適切か確認するとよい。)f:id:VCPteam:20220427213330p:image
  2. ビーカーに酸化カルシウム25gを量りとる。
  3. アルミホイル受け皿の上にうずらの生卵を割り乗せる。f:id:VCPteam:20220427213342p:image
  4. ぬるま湯約35mlをさらにビーカーに加える。その後、生卵が乗ったアルミホイル皿をビーカー内部にセットし、アルミホイル蓋でしっかりと蓋をする。(※アルミホイル受け皿は、酸化カルシウムに近すぎると沸騰した液体の影響を受けてしまうので、ビーカー中間から上部の間にセットする方が良い)
  5. 暫く様子を観察する。
  6. 変化が落ち着いたら、アルミホイル受け皿を取り出す。その後、ビーカー内部にフェノールフタレイン指示薬を数滴、滴下する。

 

・留意点

  • 卵に水酸化カルシウム溶液が付着している可能性があるので食べることは勧められない。もし食べたい場合は、ビーカーの上部にホイル受け皿をセットし、液体が付着しないように工夫する。【実際に卵付近にまで水酸化カルシウム溶液が来たかをフェノールフタレイン指示薬で検査してみた結果…アルカリなので苦い…f:id:VCPteam:20220427213700p:image
  • 水が冷たい場合は反応が始まりにくいので、冷たい水を使用する際はコンロなどで加熱する操作を取り入れる。ただし、高温にし過ぎないように注意。30~42℃くらいでよい。
  • 反応後の物質である水酸化カルシウムCa(OH)₂はアルカリ性なので、取り扱いには注意すること。
  • 水を加えると反応がすぐに始まってしまうので、受け皿をセットしてふたをするといった手順を確認しつつ、その他の準備はあらかじめ終えておくとよい。
  • 反応中は高温になっているので、触れないこと。必ず反応が終わって少し経過してから様子を見ながら操作すること。
  • 紙コップでは焦げる可能性があるので、注意する。
  • 廃棄する際は燃えるゴミに廃棄する。

 

原理

①熱発生の原理

 酸化カルシウムCaO(固)が水と反応する際の反応を熱化学方程式で表すと、

 

CaO(固) + H₂O(液) = CaO(固) + Q kJ

 

となる。これは、1㏖の酸化カルシウムが1㏖の水と反応して、水酸化カルシウムが生成する際にQ kJの熱が発生することを表している。しかし、現実には、固体の酸化カルシウムは、多量(十分にある)の水と反応(水和)したと考えると都合がよいことが多いので、その多量の水を aq とし、

 

CaO(固) + aq = CaOaq + 65 kJ

 

として記述されることが多い。この場合の65kJは、多量の水に対する溶解熱であり、水という一般的な溶媒との反応なので単に水和熱という捉え方をする場合も多い。イオン化傾向や水の消費量から見ても、水が多量に反応していると言える。(熱による蒸発もあるだろうが…)

 乾燥した固体である酸化カルシウムCaO(固)に水を加えるだけで、一定量の発熱が起こり、生成物も比較的安全な物質として処理できるので、様々な製品に応用されている。例えば、駅弁や飲み物についているひもを引くと酸化カルシウムが反応し、その熱で駅弁や飲み物を温める問いいた例がある。

 

②熱を計算してみる

 m(g)の水をΔT℃上昇させて、100℃にしたとする。そのエネルギーQ[J/㏖]は、水の比熱は 4.2[J/(g・K)]なので、Q=4.2×m×ΔT℃となる。今回使用したぬるま湯(30℃とする)の量は35ml=35gなので、100℃までに温度上昇させるには、

 

Q=4.2×35×(100ー30)J

 

=10290

 

≒10kJ

 

 次に、この10kJを、水酸化カルシウムCa(OH)₂の生成熱で得るために必要な酸化カルシウムの質量×gを考える。酸化カルシウムの式量は、40+16=56から、56g使用すれば65kJの熱が発生することになる。生成熱をXとすると、(65kJについては①の解説参照)

 

56:65 = X:10 より X=8.61...≒8.6g

 

つまり、酸化カルシウムCaOを8.6g用意すれば、水の温度を沸騰まで上げることが可能と言える。このことから、多量の熱が発生して目玉焼きができるのも納得である。また、他に例としてコーヒー250g(20℃)に酸化カルシウム72gあれば、沸騰寸前のホットコーヒーが作れる。

より詳細な内容はこちら→反応熱で卵を焼く | らくらく理科教室 (sciyoji.site)

 

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