硝酸アンモニウムの溶解熱・吸熱

【概要】

冷却材としても使用される硝酸アンモニウムと吸熱について学習する。

 

動画(※都留文科大学化学実験Ⅰの一部)

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爆発事故に関する動画

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・準備物

硝酸アンモニウム 10g、薬包紙、100mlビーカー、冷水 50ml、氷 2~3個、スターラー、スタンド、温度計(マイナス表記があるもの)

 

・操作手順

  1. 100mlビーカーに冷水50mlと氷を入れ、スターラー上にセットする。さらに、スタンドを用いて温度計をビーカー中央部に固定しておく。
  2. 硝酸アンモニウム10gを薬包紙に取る。
  3. スターラーを起動した後、硝酸アンモニウムを一気に投入する。また、その時の温度も確認しておく。
  4. 温度の変化やビーカー表面の様子を観察する。

 

・留意点

  • 硝酸アンモニウムを加えるときは一気に加えること。少しずつ時間をかけていると、温度低下があまり見られなくなる。
  • スターラーを起動する際、高回転させてしまい氷や温度計にぶつかることが無いように調整すること。
  • 氷を入れたのは冷水を用意するため。予め冷水が用意できているなら氷は不要。

 

原理

①吸熱について

 エネルギーを周囲から得ようとする吸熱反応と呼ばれるものがある。ここでは、イオン結晶である硝酸アンモニウムを水に溶解させることで、溶液の温度が低下することを確認している。硝酸アンモニウムが水に溶解する際の反応式は…

NH4NO₃ → NH4+ + NO3

水に溶解してイオンとなった成分は、水分子と水和状態にあり、電気的に安定する。この溶解に伴って起こる熱の出入りは、次のように熱化学方程式で表すことができる。ただし、硝酸アンモニウムは、大量の水に溶解するので、その水をaqと表記したときの熱化学方程式は...

NH4NO3(固) + aq = NH4NO3aq - 25.7kJ

熱量がマイナスなことから、一般的に吸熱反応と呼ぶ。水を混合するだけでかなりの吸熱効果が得られるため、瞬間冷却材として利用されているとか。また、イオン状態は固体時より自由度が高いので熱運動が起こり、その熱を溶液から奪う結果温度が低下すると考えてもよいと思われる。エタノールの気化によるものも同じ。

 今回の実験ではマイナス5℃程度まで温度が低下した。上手くいけばマイナス8℃程度にまで下がり、ビーカーの底が凍ってスターラーに張り付くこともある。

 

②吸熱の利用

 溶解時に吸熱反応を示すものとしては、尿素、塩化アンモニウム硝酸バリウム等がある。特に、水酸化バリウム八水和物と硝酸アンモニウムの混合物が強烈である。水酸化バリウムから解離した水分子に、それぞれの成分が溶け込んで、熱エネルギーの吸収が起こるというもの。ただし、この反応では、アンモニアが発生するので、取り扱いに十分な注意が必要となる。保冷剤の一部には、これら水に溶解する際の吸熱反応が利用されていて、混ぜ合わせると急冷する瞬間冷却パックがよく知られている。携帯できるので便利である他、廃棄しても問題がさほどない。ただし、硝酸アンモニウムそのものは多方面の製造において利用される物質で、肥料や医薬品、爆発物の原材料ともなるものである。

 

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