ヨウ素デンプン反応とデンプンの分解

今回は、様々なものを用いてヨウ素デンプン反応を観察してみました。

 

動画

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【※先生の動画になります。】

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・準備物

デンプン 薬さじ(大)半分以下、500mlビーカー、水 300ml、ガラス棒、ガスコンロ、コピー用紙、筆、紙コップ、ヨウ素液(ヨウ素を水で薄める)、100mlビーカー(ヨウ素液入れる用)、食パン、米粉煎餅、コーンスターチ白玉粉、50mlビーカー 2つ、シャーレ 2つ、水 少量(300mlとは別に)、試験管、試験管立て、胃薬

 

・操作手順

  1. 500mlビーカーに水300mlとでんぷんを入れて加熱しながら混ぜる。温度は75℃まで加熱する。(※焦げ付かないようによく混ぜ続ける。急激に透明なるのが見どころ)
  2. 溶けたことが確認出来たら火を止めて冷ます。
  3. 冷ます間に、ヨウ素液を作成する。(ヨウ素の色が微かに見える程度が良いかも。ヨウ素1mlに水を加える。)
  4. ヨウ素液を紙コップに分けて、筆を浸けながらコピー用紙に絵をかいてみる。(紫色を呈するので、紫色のものを描くとよさげだったり)
  5. シャーレに食パン(白い部分の一部)と米粉煎餅をそれぞれのせて、ヨウ素液をピペットを用いて滴下し、色の変化を見る。
  6. コーンスターチ白玉粉を50mlビーカーに少量とり、更に水を少量加えて溶かす。そこにヨウ素液を滴下して様子を観察する。
  7. 上記の操作の間にデンプン溶液が冷めているか確認する。デンプン溶液にヨウ素液を1滴滴下してガラス棒でかき混ぜ、色が消えれば温度が高い証拠なので、もうしばらく放置する。
  8. 試験管にデンプン溶液を取り分けて、ヨウ素液を加えて色を付ける。(※これがいわゆるヨウ素デンプン反応。)
  9. 胃薬を試験管に入れて水で溶かし、ピペットを用いてデンプン溶液入り試験管に、滴数を変えてそれぞれに胃薬水を加える。(※動画内では、4本のデンプン溶液入り試験管に、右から順番に入れない1滴入れる8滴入れる16滴入れる

・留意点

  • デンプン溶液が焦げ付かないように注意して混ぜながら加熱する。また、高温になりすぎないように75℃程度に収めておくとよい。透明になれば加熱終了。
  • ヨウ素液が濃いと絵を描いたときやコーンスターチ等に滴下する際、その色が邪魔になり本来観察したい色が観察できなくなる可能性があるので注意。
  • 試験管やピペット、シャーレといった器具を大量に扱うので片付けに時間がかかる。やる内容を絞ったり、デンプン溶液をあらかじめ作って置く等の工夫が必要。

デンプンは、多数のグルコースが、α-1,4(または1,6)グリコシド結合により多数結合した多糖類で、分子量が数万~数百万となるとなる高分子化合物である。特に、α-1,4グリコシド結合によって、らせん状円筒構造をとっているものをアミロース構造と言い、6個のグルコースで丁度1巻きする形になっている。アミロース内部にヨウ素分子が並んで複合体を構成しており、特定のスペクトルを吸収して紫~青紫色を呈する。

アミロース構造】

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グルコースが6個半くらいで一周する構造の話は、有機化学系では常識と注意された記憶が…。また、ヨウ素分子が並んでいるように見えるが、ヨウ素原子が並んでいるイメージ。アミロース内部にヨウ素原子が並べばいいので、図のようにではなく、もっとばらけて均等に並んでいるといった方が正しい】


このらせん構造の内部に、ヨウ素分子が並ぶことによる呈色反応をヨウ素デンプン反応といい、紫色を呈する。かなり鋭敏な反応で、デンプンや酸化還元反応で扱うことも多い。常温でははっきりとした呈色反応が見られるが、約60℃を超えるくらいから色が抜けていく。これは、熱運動が活発になってアミロース構造が緩み、ヨウ素分子の配列も乱れることによる。ただ、冷やされればまた色が戻ってくるという可逆的な反応である。

 

デンプンは、硫酸などの酸や酵素による加水分解によりグルコースが生成してくる。アミロースの分解が進行すると、次第にヨウ素デンプン反応が弱まり、いずれ完全に反応が見られなくなる。生成した単糖類のグルコースは、還元性を示すので、フェーリング反応等により確認することが出来る。

 

デンプンの分解に硫酸を用いる場合、4㏖/L・90℃という激しい条件でも完全に加水分解するのに5分くらいかかる。しかし、生体内にも存在するアミラーゼ等の酵素を用いると体温程度で爆発的に反応が進行し、酵素の反応性がいかに高いかがわかる。錠剤のタカジア錠は、アミラーゼの一種であるジアスターゼの発見者である科学者、高峰譲吉の名に由来するとか。今回も、体温程度まで下がったであろうデンプン溶液に胃薬溶液を滴下すると、滴下量によってデンプンが分解されて色が薄くなる様子が観察できる。分解はせいぜいマルトースどまりであろうが、アミロース構造が壊れていく様の観察は出来ると言える。

 

デンプンは冷水には溶けにくいので加熱が必要になるが、初めは白く濁っているものの、70℃を超えると急に透明になるところには注目である。一度完全に溶解させてしまえば常温になっても透明を保つ。さらにデンプン溶液はチンダル現象を示すので、ホ歩コロイド溶液として扱うことが出来る。

 

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都留文科大学理科教育の一環

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