ペンが宙に浮く
【概要】
手軽な工作で磁石の働きを確認してみる。
動画
・準備物
ボールペン(ジェットストリーム使用。長さ約14㎝)、ネオジム磁石(直径約6㎜の小さいもの) 4個、クリップ(28㎜/1.1in)、テープ、フェライト磁石 4個、工作用紙
・操作手順
- ボールペンの先端とノック部分にネオジム磁石を1つずつテープで取り付ける。
- クリップの口径が狭い方を立ち上がらせて壁を作り、工作用紙にテープで固定する。
- クリップから14.5㎝の所にネオジム磁石を設置する。この時、ネオジム磁石はボールペンの磁石と反発するように設置する。(※設置位置は下図参照)
- クリップにボールペンの先端の磁石をつけてから、ノック部分の磁石を近づけてペンを浮かせる。(※微調整が必要な場合がある)
- 【応用】工作用紙につけたネオジム磁石をフェライト磁石に変えるとどのような変化が起きるのか試してみる。また、極を変えたりしてみて動きに違いが出るか観察してみる。
・留意点
- 調整が必要な場合がある。そのため、磁石との距離をクリップを少し倒したり引いたりして調整する。
- 浮く位置は、設置した磁石の端にボールペンの磁石が近づくようにするとよい。
- 使うペンによってはクリップと磁石の間隔を14.5㎝以上に広げなくてはいけない可能性がある。
原理
磁石の反発により浮いている。また、2つの磁石を用いることで安定性を高めている。2つの磁石の間に、ボールペンのノック部分の磁石があれば安定して浮いていることが出来ると考えられる。作り方等を変えると空中で回転するペンが作れるとか…
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お手軽にコアンダ効果体験!
【概要】
手軽に手に入れられるもので、コアンダ効果を体験できる工作を作成した。
動画
・準備物
ストロー 1本(直径6㎜、ジャバラ付き)、ビーズ(軽いタイプ、直径8㎜)、ガラスビーズ(重いタイプ、直径10㎜)
・操作手順
- ストローのジャバラが無い方を、半分に切る。
- さらに、ストローのジャバラが無い方を、端から1.5㎝まで四つ切り込みを入れる。
- 切り込みを開く。(※切り込みが丁寧でないとビーズが上手く乗らないので注意)
- ビーズを乗せて、ジャバラ側を加え、息を吹いて様子を観察する。
・留意点
- ビーズの直径が小さいものを選ぶと、誤飲の可能性があるので注意。必ず、ビーズはストローの直径よりも大きなものを使用。
- ガラスビーズは重いので、浮かせるのには困難である。しかし、回転が良く見えるので、回転の観察用や上級者向けとして使用するとよい。
- ストローを半分に切らなかったり、切り込みを入れなくてもコアンダ効果を体験できるが、ビーズが安定して元の位置に落ちてこない。そのため、目に当たったりと怪我をしてしまう可能性があるので非推奨。【この様な遊び方は非推奨の例(切らない上に切り込みもない)】
原理
解説はこちらの記事を参照
コスト的にはかなり低くできたと思われる。ストローもビーズも複数個入って販売されているので、低コストで多人数に提供が可能である。
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葉脈標本の作り方
【概要】
葉肉を外し、葉脈を観察できる標本を作る。
動画
・準備物【3人グループ想定】
500mlビーカー、水酸化ナトリウム 25g、ヒイラギモクセイなど肉厚種の木の葉 10枚程度、沸騰石 2粒、温度計、ピンセット、トレイ、歯ブラシ、水、コンロ、フェノールフタレイン指示薬、保護めがね、使い捨て手袋、ピンセット、キッチンペーパー
・操作手順
- 手袋をし、500mlビーカーに水酸化ナトリウム25gを入れ、更に水を加えて全体を250mlにする。
- ヒイラギモクセイ葉を水酸化ナトリウム水溶液に入れて、沸騰石2粒を入れた後、温度計を用いて加熱する。(※約20分間80℃に保つこと)
- ピンセットを用いて葉を一枚トレイに取り出し、流水にさらして水酸化ナトリウムを流し去る。さらに、歯ブラシを用いて葉肉が容易に取り除けるかを確認する。(※葉肉がとりにくい場合は、更に加熱を継続する。取り出した葉は水気を取った後戻すか、廃棄処理をする)
- 3.の確認が済んだら、ピンセットで全ての葉をトレイにピンセットで写し、流水に十分にさらして水酸化ナトリウムを流し去る。(※水酸化ナトリウムが完全に流しされているかを、フェノールフタレイン指示薬をトレイに滴下して確認する。色が付かなくなるまでしっかりと洗い流す。)
- 手袋を外し、水を流したトレイ上で歯ブラシを用いて葉肉を取り除く。水に浸しながら葉肉を洗い落としつつ、細かく叩くように取り除いていくとよい。(※力でこすり落とそうとすると葉脈がちぎれてしまうので注意)
- 水でしっかりと洗い流した後、キッチンペーパーで水気をしっかりととる。
- 乾いたら観察する。
- 【発展】余裕があればパウチに入れ、ラミネート加工し、しおり作りを行う。(好みで絵の具やマーカーで葉脈に着色するのもよい)
・留意点
- 水酸化ナトリウムを用いるので、手で触れるときや加熱時には注意を払い、保護メガネと手袋を必ず着用する。
- 温度計は80℃に達したことを確認できれば良いので、確認後はすぐに洗浄してしまう。
- 葉脈は破れやすいので、歯ブラシで叩き過ぎないこと。
- 水酸化ナトリウム廃液は指定容器へ廃棄する。
しおり作成はこちらの記事を参照
原理
①葉肉のみが残る理由
水酸化ナトリウムは強塩基性を示す。そのため、植物組織の一部を溶かしたり柔らかくする働きがある。(ミカンの皮むきや野菜のあく抜き時に炭酸水素ナトリウムを用いるのと同じ原理)
葉の大部分である葉肉を構成する成分の内、細胞膜部分のタンパク質とリン脂質は加水分解されて溶けだし、細胞同士をつなげて安定させるペクチン質も分子内のカルボキシ基との酸塩基反応により水に溶解しやすくなる。
一方、葉脈(今回残った部分)は、アルカリに解けないセルロースやリグニンが堅固に結びついて安定した構造を保っている(木化)ので、葉肉が溶け去った後に、骨組みのような筋だけが残る。
水素ナトリウムは水に溶けて強い塩基性を示す。(NaOH → Na⁺ + OH⁻)そして、タンパク質を加水分解する。 ([HN-▢‐CO]n + NaOH → n[H₂N-▢‐COO⁻-Na⁺]) ▢:様々な分子骨格部の省略形
②材料のヒイラギモクセイ
材料のヒイラギモクセイの葉は、特にしっかりとした葉脈を持ち、その構造を観察するのに適した教材だ。葉脈は、細胞に必要な水や養分を供給したり、生産された光合成産物を送り出す役割を持ち、動物でいえば、血管に似た機能を持っている。また、葉を水平に広げて支える強固な構造は、光合成の効率を高めるのに都合が良い。葉脈は、茎とつながる葉柄の部分から始まり、葉の端に向かって細かく枝分かれして網状となっている。ルーペで観察すると、全体の構造と個々の小さな部分が自己相似形を繰り返す、いわゆるフラクタル構造をしていることがわかる。生物が生命活動をする上で、有効な構造をとっている結果なのだろうが、自然の造形美を楽しむことができる。
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酢酸ナトリウムのブレイク現象 ~エコカイロ作り~
【概要】
無水酢酸ナトリウムを用いて、繰り返し利用可能なカイロを作る。また、凝固熱について学ぶ。
動画
・準備物【3つ分の分量】
無水酢酸ナトリウム 30g、水 30g(1:1の比率)、コンロ、100mlビーカー 2つ、300mlビーカー、電子天秤、ガラス棒、ヘアピン 3つ、チャック付きビニール袋 3つ、お湯
・操作手順
- 無水酢酸ナトリウム30g、水30gを100mlビーカーに電子天秤で量りとる。
- コンロで加熱し、ガラス棒を用いて無水酢酸ナトリウムを完全に溶解させる。
- チャック付きビニール袋にヘアピン(閉じた状態)を入れておく。
- 無水酢酸ナトリウム水溶液が透明になり、袋が溶けない温度(60℃くらい?)まで冷めたら、チャック付きビニール袋に無水酢酸ナトリウム水溶液を袋の半分以下まで入れる。
- 空気を抜いてチャックを閉じる。
- 冷水(水道水)を入れた100mlビーカーに、チャックをした袋を入れて粗熱をとる。
- ある程度冷めたら冷水から取り出し、内部のヘアピンを開いて刺激を与える。(※取り出すときは刺激を与えないように注意!)
- 【再利用実験をする場合】300mlビーカーにお湯を沸かし、結晶が出た無水酢酸ナトリウム水溶液を袋ごとお湯につけて溶かす。この際、袋が溶けないように注意する。
- 無水酢酸ナトリウムが溶けたら冷まし...6.~8.を繰り返す。
・留意点
- 凝固が見られない場合もあるので、バックアップに複数個用意するとよい。
- 袋が溶けない温度になったらすぐに入れること。冷まし過ぎるとビーカー内部で結晶化が進んだり、結晶化が見られない可能性がある。
- 袋は厚手のものを推奨。薄手だと、耐熱性が低く穴が開いて溶液が漏れる可能性がある。
原理
①結晶化のメカニズム
冷凍庫の中で一定時間置いたドリンクをカップに注ごうとしてキャップを外したとたん、突然凍り出してしまうという、いわゆる「過冷却」と同類の現象(有名なものではフローズンコーラ)。一般に、水に溶解しやすい物質の溶解度は、温度上昇に伴って大きくなるものが多い(ミョウバンが良い例)。溶解度に達した飽和溶液をそのまま冷却していけば、その温度の溶解度に応じた余分な結晶がすぐにでも析出してきそうだが、いったん溶解させた物質は、溶解度を超えた状態でもなかなか結晶が析出せず、一時的に過飽和の状態になる。溶解している成分は、水のような溶媒分子に取り囲まれて安定しているため、結晶が析出し始めるためには、一定の刺激(エネルギー)が必要となる。そこで、少し物理的な衝撃を加えてやると一気に結晶化(ブレイク)が進行する。逆に言えば、水溶液中に析出のきっかけ(トリガー)になる不純物(チリやゴミ、溶け残り等)がもともと多く含まれていると、過飽和の状態が維持されにくくなる。そこで、トリガーになりそうな不純物をあらかじめろ過などして取り除いておくと、それだけエネルギーが高まったところから劇的なブレイクを観察することができる。
②熱の発生
このブレイクによる劇的な結晶析出には、大量の熱の放出を伴う。これは、結晶核の投入によって溜まっていたエネルギーが一気に解放されるからである。この酢酸ナトリウムを封入し、融解と凝固を繰り返すことで再利用可能となる発熱体が「エコカイロ」として販売されている。そのビニールの容器内部には、トリガーとなる金属片が入っていて、それを刺激すると凝固が始まり凝固熱が...
CH3COONa + 3H2O = CH3COONa・3H2O + 39.5 kJ
【凝固する様子】
他の解説はこちらの記事を参照
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酸化カルシウムの反応熱でウズラの卵の目玉焼き作り
【概要】
酸化カルシウムが水に溶解する際の熱の発生を確認する。
動画(※動画は都留文科大学化学実験Ⅰの一部)
・準備物
アルミホイル(約30×30㎝角)、200mlビーカー、酸化カルシウム 25g、うずら生卵、ぬるま湯 約35ml、フェノールフタレイン指示薬、爪楊枝やシャープペンシル
・操作手順
- アルミホイルを用いて、ビーカーに被せる用のふたと、生卵用の受け皿を作る。また、ふたには爪楊枝などを用いて小さな蒸気穴を作っておく。(※特に受け皿は、ビーカーにセットしてみて大きさが適切か確認するとよい。)
- ビーカーに酸化カルシウム25gを量りとる。
- アルミホイル受け皿の上にうずらの生卵を割り乗せる。
- ぬるま湯約35mlをさらにビーカーに加える。その後、生卵が乗ったアルミホイル皿をビーカー内部にセットし、アルミホイル蓋でしっかりと蓋をする。(※アルミホイル受け皿は、酸化カルシウムに近すぎると沸騰した液体の影響を受けてしまうので、ビーカー中間から上部の間にセットする方が良い)
- 暫く様子を観察する。
- 変化が落ち着いたら、アルミホイル受け皿を取り出す。その後、ビーカー内部にフェノールフタレイン指示薬を数滴、滴下する。
・留意点
- 卵に水酸化カルシウム溶液が付着している可能性があるので食べることは勧められない。もし食べたい場合は、ビーカーの上部にホイル受け皿をセットし、液体が付着しないように工夫する。【実際に卵付近にまで水酸化カルシウム溶液が来たかをフェノールフタレイン指示薬で検査してみた結果…アルカリなので苦い…】
- 水が冷たい場合は反応が始まりにくいので、冷たい水を使用する際はコンロなどで加熱する操作を取り入れる。ただし、高温にし過ぎないように注意。30~42℃くらいでよい。
- 反応後の物質である水酸化カルシウムCa(OH)₂は強アルカリ性なので、取り扱いには注意すること。
- 水を加えると反応がすぐに始まってしまうので、受け皿をセットしてふたをするといった手順を確認しつつ、その他の準備はあらかじめ終えておくとよい。
- 反応中は高温になっているので、触れないこと。必ず反応が終わって少し経過してから様子を見ながら操作すること。
- 紙コップでは焦げる可能性があるので、注意する。
- 廃棄する際は燃えるゴミに廃棄する。
原理
①熱発生の原理
酸化カルシウムCaO(固)が水と反応する際の反応を熱化学方程式で表すと、
CaO(固) + H₂O(液) = CaO(固) + Q kJ
となる。これは、1㏖の酸化カルシウムが1㏖の水と反応して、水酸化カルシウムが生成する際にQ kJの熱が発生することを表している。しかし、現実には、固体の酸化カルシウムは、多量(十分にある)の水と反応(水和)したと考えると都合がよいことが多いので、その多量の水を aq とし、
CaO(固) + aq = CaOaq + 65 kJ
として記述されることが多い。この場合の65kJは、多量の水に対する溶解熱であり、水という一般的な溶媒との反応なので単に水和熱という捉え方をする場合も多い。イオン化傾向や水の消費量から見ても、水が多量に反応していると言える。(熱による蒸発もあるだろうが…)
乾燥した固体である酸化カルシウムCaO(固)に水を加えるだけで、一定量の発熱が起こり、生成物も比較的安全な物質として処理できるので、様々な製品に応用されている。例えば、駅弁や飲み物についているひもを引くと酸化カルシウムが反応し、その熱で駅弁や飲み物を温める問いいた例がある。
②熱を計算してみる
m(g)の水をΔT℃上昇させて、100℃にしたとする。そのエネルギーQ[J/㏖]は、水の比熱は 4.2[J/(g・K)]なので、Q=4.2×m×ΔT℃となる。今回使用したぬるま湯(30℃とする)の量は35ml=35gなので、100℃までに温度上昇させるには、
Q=4.2×35×(100ー30)J
=10290
≒10kJ
次に、この10kJを、水酸化カルシウムCa(OH)₂の生成熱で得るために必要な酸化カルシウムの質量×gを考える。酸化カルシウムの式量は、40+16=56から、56g使用すれば65kJの熱が発生することになる。生成熱をXとすると、(65kJについては①の解説参照)
56:65 = X:10 より X=8.61...≒8.6g
つまり、酸化カルシウムCaOを8.6g用意すれば、水の温度を沸騰まで上げることが可能と言える。このことから、多量の熱が発生して目玉焼きができるのも納得である。また、他に例としてコーヒー250g(20℃)に酸化カルシウム72gあれば、沸騰寸前のホットコーヒーが作れる。
より詳細な内容はこちら→反応熱で卵を焼く | らくらく理科教室 (sciyoji.site)
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作ろう!エコカイロ
【概要】
酢酸ナトリウムの凝固の際に発生する熱を利用したカイロを作成した。
動画(※動画は都留文科大学化学実験Ⅰの一部)
・準備物
無水酢酸ナトリウム 10g、温度計、ビニール袋(厚めチャック付き袋:ダイソー製50×70)、ヘアピン、100mlビーカー、水、ガムテープ
・操作手順
- ビーカーに無水酢酸ナトリウムを量りとる。
- 水10gを加えた後、穏やかに加熱して温度計を用いて完全に溶かす。(※加熱は75℃まで)
- 60℃になるまで静置し、放冷する。
- チャック付きビニール袋にヘアピンを入れておく。そこに60℃に冷えた無水酢酸ナトリウムを入れる。その後、チャックを閉め、更にガムテープで口をしっかりと塞ぐ。
- さらに放冷する。もしくはビーカーに冷水を入れ、その中で冷ます。(※冷水で冷ますときは結晶化する可能性があるので注意すること)
- 冷えたら、内部のヘアピンを解除して刺激を加え、様子を観察する。また、実際に触れてみる。
- もう一度実験を行いたい場合は、ビニール袋を水中に入れた状態で加熱し、無水酢酸ナトリウムを熱で溶かせば可能。(※袋が溶けるほどに高温にはしない)
・留意点
- 結晶が出ないように60℃近くで袋に酢酸ナトリウム溶液を加えるが、火傷に注意。
- 袋が薄手のものであると、ヘアピンを動かしたときに袋に穴が開く可能性があるので注意。
- 結晶が見られない可能性がある。ただ、刺激を加えてから少しして結晶化が起こることもある。
原理
無水酢酸ナトリウムを加熱しながら水に溶解させ、その後冷却する(溶解時に吸熱する)。温度が低下してきて溶解度に達するが、すぐに結晶は析出してこない。溶解度を超えてしばらくは水溶液の状態で過飽和の状態を保つ。しかし、結晶粒や物理的な振動によって、その状態が破られ(ブレイク)、一気に結晶化が進行する。その際に結晶の凝固熱の発生が見られる。反応式は、
CH₃COONa + aq = CH₃COONaaq + 39.5kJ (aq=アクア、多量の水)
この熱を保温材(カイロ)として利用し、加熱して再利用を繰り返すことが出来る便利グッズも開発されている。また、放射状に結晶が広がるのだが、低濃度であればゆっくり綺麗な針状結晶が見られるのだとか。濃度調整によって反応速度を変えられるのは面白いかもしれない。ただ、加熱のエネルギーと発熱のエネルギーが釣り合っている(±0でエコ)かは...
突然の結晶化には過冷却がある。今回の無水酢酸ナトリウムについても同じである。過冷却とは変化するべき温度以下でも状態が変化しないこと(今回は液体から固体になる状態変化が、凝固点以下の温度になっても起きないこと)だが、この状態時に刺激や結晶核になるものが加わることで、そのエネルギーによって爆発的に反応、凝固が始まる。酢酸ナトリウム以外にも水を用いた過冷却の実験(難度は高い)があるのでトライしてみてほしい。
孔雀の羽のように見えるので写真を…
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流れる水の実験装置作成
今回は流れる水の実験装置を、身近なもので作成してみました。
動画
①
②
・準備物
①大型版
プラスチック容器(幅192㎜×奥行255㎜×高さ109㎜)、ポリスチレン板(B5。耐水性のあるものならどれでも可)、ビーズ、コットン、ガムテープ、苦土石灰、はさみ、水 少量
②プラカップ版
375mlカップ、500mlカップ 2個、竹串(18㎝)、きり、ガムテープ、コットン
・操作手順(①について)
- ポリスチレン板を端から2.8㎝切り、ガムテープを用いて容器中央に立てて設置し、仕切りを作る。
- 苦土石灰を入れる。さらに水を少量ずつ加えて土壌を固める。固めたら手で斜面等形を整える。
- 土壌の上にビーズをまく。さらに、コットンを土壌とは逆側に配置する。
- 目印にビーズを置き、水を流して様子を観察する。(※水をコットンが吸いきれない場合は、追加でコットンを入れる)
・操作手順(②について)
- プラカップ(375ml)を縦半分に切り、口の部分をつなげてガムテープでとめ、容器を作る。
- 竹串を容器の端にガムテープで取り付ける。
- 500mlカップ2つの側面にそれぞれ穴を空ける。下の穴(カップ口から5~6㎝程)は容器が軽く斜めになるくらいの高さ、もう片方は上端近く(カップ口から11~12㎝程)に空ける。
- 穴に竹串を通して容器を固定し、下方にコットンを仕込んでおく。
- 残りは①と同じく土壌を作りビーズをまいて水を流す。
・留意点
- コットンは水を吸ったのちに廃棄。こうすることで砂による排水溝のつまりを防げる。
- 土壌は形を整えて乾かせば再利用が可能。再使用時には水気を含ませなければいけない可能性はあり。
- ミニスケール実験なので、水を流す量は多くない方がよい。また。洗瓶といった口の細いもので行う方が、土壌の一部のみけずれて観察がしやすいと思われる。
- ビーズでは軽すぎて浮いてしまうこともあったので、カラーサンドといった色がついているかつ水の運搬で運ばれる程度の重さのものを使用するとよい。
- コップの装置は、机の端に受け皿のコップを取り付けることでコットンが不要になる。水を捨てる際はガーゼ等で砂が流れないように注意。
装置を安価に作成しようと試みた。どの素材も100円ショップにあるものであり(今回はセリア)、手軽に試せる。作成時間はある程度かかるが、コストダウンに関しては成功していると言えるのではないだろうか。また、工夫点でビーズを用いて水の運搬の働きを捉えやすいようにしている。
試作の様子
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