界面活性剤の働き 

今回は界面活性剤の働きを見てみました。

 

動画


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・準備物

適当な布 2つ、ラー油 数滴、ビーカー 2つ、水道水、合成洗剤 少量

 

・操作

  1. 布にラー油を数滴垂らして置く。
  2. ビーカー2つに水道水を加え、片方には合成洗剤を加える。
  3. 水いりビーカーと洗剤入りビーカーにそれぞれラー油つき布を入れて様子の違いを観察する。
  4. 布についたラー油に直接洗剤をつけてから水いりビーカーに戻して観察する。

 

赤いラー油の球体が浮いていっているが、これはミセルコロイドが生成されていると言える。

界面活性剤は炭素鎖の疎水基と親水基からなる。親水基には種類があり、大まかに4つに分けられる。以下、4つの界面活性剤の種類である。

  1. 陰イオン(アニオン)界面活性剤・・・親水基はマイナスの電荷をもつ
  2. 非イオン(ノニオン)界面活性剤・・・親水基はイオンに解離しない
  3. 陽イオン(カチオン)界面活性剤・・・親水基はプラスの電荷をもつ
  4. 両性(両性イオン)界面活性剤・・・親水基はプラスとマイナスの両方の電荷をもつ

界面活性剤が油分に触れると、疎水基が油分に溶け込み親水基は水の部分に向けて並ぶ。やがて油分は疎水基に惹きつけられ、親水基が周りを取り囲んでミセルコロイドという球体を形成する。この状態で大量に水の中に分散して存在することになる。この状態で水を注ぐことで油分が流され、結果これを洗浄効果と呼んでいる。

ミセルコロイドになる際に球体の中心に油分を取り込むが、これを『乳化』といい、この乳化作用が油汚れを落としやすくなる鍵である。

 

【ミセルコロイドの図示】

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そもそも石鹸は、古代ローマ時代に生贄に捧げた羊の油脂が下にある木の灰(アルカリ:塩基性酸化物)と反応して偶然に出来たと言われている。(諸説あり)

 

また、使用する水によって石鹸は効果に変化がある。

 

動画


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・準備物

塩化ナトリウム 少量、塩化マグネシウム(下剤 にがり) 少量、塩化カルシウム 少量

石けん(水道水と『生活の木』(?)の固体石けん)

 

・操作

1. 石けんと水道水で石鹸水を作る。

2. 3つの試験管に分ける。

3. 各イオン投入時での様子を観察する。(中和→塩析)

 

一番左のナトリウムイオン(Na⁺)を加えたものに比べて、真ん中のマグネシウムイオン(Mg²⁺)や一番右のカルシウムイオン(Ca²⁺)を加えたものの方が、動画の最後で塊の量に違いがあるように見える。ナトリウムイオンを加えた方は軟水と呼ばれるもので、日本はほとんど軟水であると言われる。一方他の水溶液は硬水と呼ばれ、ミネラル等を多く含んでいるほど硬度は上がる。硬度は主にマグネシウムイオンやカルシウムイオンの量が決め手となっている。軟水に比べ硬水を使用すると、洗浄能力は落ちるとされている。また、イオン半径も関係がある。

電荷的にマイナスな親水基がプラスの電荷であるマグネシウムイオンやカルシウムイオンと結びつき、金属塩(石鹸カス)が出来てしまうことが洗浄能力低下の原因である。硬水中ではマグネシウムイオンやカルシウムイオンが多く含まれているので、成分の凝集沈降、塩析が起こり石鹸としての役割を果たしにくくなる。

界面活性剤は集合してミセルコロイドを作るが、汚れに界面活性剤が結びつく前に金属イオンと先に反応して水に不溶な金属塩になってしまうので、汚れを浮かせて落とすために必要な界面活性剤の量が減ってしまう。汚れを落としたり泡を作るといった界面活性作用が失われることを失活という。

マグネシウムイオンやカルシウムイオンが界面活性剤と結合してできる金属塩は、水に不溶であるので、かすとして出てくる。(動画内では最後の試験管の壁についている)

しかしそうであるならばナトリウムイオンも反応しそうなものであるが、これは生成する金属塩の水への溶解性が関係していると考えられる。ナトリウムイオンは元々石鹸を作る際にも使用されており、マグネシウムイオンやカルシウムイオンの塩よりも水に溶けやすいため、結合している界面活性剤が分離し汚れに向かうのではないかと思われる。そのためイオン化傾向のみで洗浄能力の話は出来ない。

また、金属イオンと結合してできたものを金属石鹸と呼ぶことがある。洗浄能力はないものの、潤滑剤やプラスチック、セメントに金属加工といった様々な用途に使用されている。また、軟度が高い水であると脂肪酸が肌に残りぬるぬるしてしまうので、ある程度の硬度を持つ水でないと、体にぬるぬるが残らないさっぱりとした洗いあがりにはならない。

 

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