酢酸ナトリウム飽和水溶液の結晶 ブレイク (過冷却からの析出) 失敗例
今回は酢酸ナトリウム飽和水溶液を作成して、結晶の析出、ブレイクを起こしてみました。
動画
・準備物
酢酸ナトリウム三水和物、コンロ、温度計、スタンド
結晶が突然析出する『過冷却』と同様の現象である。例としては、コーラを冷凍庫で揺らさずに冷やし、数時間後に刺激しないように取り出して注ぐと、注いだところからシャーベット状に固まっていくものがある。
一般的に、物質の溶液への溶解度は温度上昇に伴って大きくなるものが多い。溶解度に達した飽和水溶液をそのまま冷却していけば、温度の溶解度に応じた余分な結晶がすぐに析出してしまいそうなものである。しかし実際は、一度溶解させた物質は溶解度を超えた状態でも中々析出せず、一時的に過飽和状態になる。溶解している成分は水のような溶媒分子に囲まれており安定している。そのため、結晶が析出し始めるには一定の刺激、エネルギーが必要となる。(安定を崩す必要がある)
そこで物理的な刺激を加えることで一気に結晶化(ブレイク)が起こる。水溶液中に不純物(チリやほこり、他の物質の結晶等)が多く含まれているほど、過飽和の状態が維持されにくくなる。(不純物が刺激となるため、ブレイクが起こりにくい)
そのため、トリガーになりそうな不純物をあらかじめ取り除いたり入らないようにすると、劇的なブレイクの観察が可能になる。
今回は酢酸ナトリウム飽和水溶液を結晶が見えなくなるまで溶かし、刺激を与えずに放置して冷却した。ゆっくりと冷やすことがコツとみられる。急冷するとそれが刺激になってブレイクの観察は難しい。過冷却をさせることが必須。今回は下からブレイクが見られたことに加えて結晶が雪のように出てきてしまったため失敗とした。原因としては水面にチリやほこりが落ちて刺激となり、早く結晶化してしまったことや、ビーカー下部と上部で温度(冷え方)が違ったので結晶の析出に違いが出たと推察される。均等に冷やすためにアルミホイル等でくるんでゆっくり冷やすことが望ましいが、アルミホイルをはがす揺れで結晶化してしまわないように注意する。また、シャーレのような高さのないものを使えば早く冷えるほか、上部と下部で温度差が大きく開くことはなく、成功率は高い可能性がある。(今回は加熱後60~56℃あたりでメタセコイアの実を入れてみたりと刺激を加えたが、あまりいい結果は得られていない)
また、この反応では結晶析出時に大量の熱の放出を伴う。これは、結晶核(ちりやほこり、エネルギー等)の投入によって溜まっていたエネルギーが一気に解放されるためである。この仕組みを利用したものが『エコカイロ(温熱パッド)』である。これは内部の金属片が結晶核、トリガーとなり、ブレイクを起こしてそれに伴う発熱で暖をとるといった仕組みである。
反応式としては、
CH₃COONa + 3H₂O → CH₂COONa・3H₂O + 39.5kJ
ブレイクしたものを再び過熱して溶かして再利用もよいが、少し水を加えて溶かした液の再結晶は、ゆっくり結晶化していく。
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※都留文科大学理科教育の一環