動画
ジャイロ効果を体験できる工作の作り方の記事はこちら
こまの原理
ジャイロ効果の工作動画一覧はこちらの再生リストから
先ず初めに、軸を空中に固定する動画の原理について解説する。
角運動量とは、回転の腕の長さ(半径x)と、運動量(P)という量で決まるベクトル量である。ただし運動量は正確には質量・速度(m・ν)である。また、角運動量を示すベクトルは、外積のため、下図のようにz軸に垂直になる。また、運動量の変化の向きによっては、下向きにもなる。向きを確かめる際は、右ねじの法則の手を用いる。親指は角運動量のベクトルの向き、残りの指は変化の方向である。下図の場合は、変化が反時計回りのため、角運動量のベクトルは上向きとなる。
これに関して角運動量保存則は、回転に影響を与える力が働いていなければ向きも値も変化しないことをいう。ただし実際には、空気抵抗や摩擦があるので完全な保存は無理である。
式は、
L=x×P (L→角運動量、x→半径、P→運動量 この式は外積で示される。)
となる。
保存則が成り立っているとすると、L=一定となるので、半径が大きくなれば回転速度は下がり、半径が小さければ回転速度が上がる。例としては、スケート選手の回転がある。
【角運動量の図】
②吊り下げると何が起こっているのか(結び目を中心にして回転している理由)
ハンドスピナーを吊り下げて回転させると、上記の通り角運動量ベクトルが求まる。(下図参照)しかし、このままでは軸が何故水平に保たれているのか、ダボがひもの結び目を中心に回転している説明としては不十分である。
そのため、段階を踏んで考えてみる。先ずは、ダボがひもの結び目を中心にして回転する理由について。
- ハンドスピナーの運動量と半径から、角運動量ベクトルが求まる。(上図のL。これをベクトルAとする)
- 次にハンドスピナーは重力を受けるので、重力を受けて動くとみると運動していると言える。これを運動量とみなして、半径はダボから結び目までとすると、別の角運動量ベクトルが求まる。(下図のL‘。これをベクトルBとする)
- ベクトルA+ベクトルBは、ベクトルAの方向に対して常にずれるので、ダボが時計回りもしくは反時計回りに回転する。
ベクトルA+ベクトルBをすると、常に軸方向は斜めを指すことがわかる。よって、その斜めの方向に回転していく。勿論、ハンドスピナーの回転を逆にすれば、ベクトルAの向きが変わるので、結び目中心の回転方向は逆になるはずである。ハンドスピナーの回転が、結び目とは逆側から見て時計回りに回転していると、吊り下げた時には時計回りに回転する。一方反時計回りに回転させると、逆向きに回転する。
③軸が水平に保たれる理由
さて、ここまで様々な解説を行ってきたが、軸が水平に保たれる説明は出来ていない。水平に保たれるということは、重力に逆らうような向きに力が働いていなければいけない。さらにその力が回転速度に依存することも示さなくてはならない。これは、ニュートンの運動の法則、第一法則の運動の持続及び、慣性モーメントが関係している。特に慣性モーメントは回転に関連する。スピナーの回転は空気抵抗等から回転力を失う。そのため軸を安定させるための力よりも重力に負けていってしまう。しかし、回転力の低下は劇的ではなく段階的なので、ゆっくりと軸が重力に従って落ちていくというわけである。
より詳しい解説はなかなか難しいので、また後に更新出来たら…
【追記】
集気瓶の蓋をCDディスクの代わりに用いると、安定性が増し、ジャイロ効果によるディスクの直立が長く観察出来た。考えられる原因としては、①CDディスクよりも軽量であった、②地面から重心の位置がCDディスクよりも低く安定しやすかったと言う点が考えられる。しかし、注意点として、ガラス製の為、落としたりした場合、ケガをする可能性が非常に高い。その為、観察する演示実験としては良いが、各児童等が行う場合はガラス製でないものを使うか、軍手や保護メガネといった対策を講じる必要あり。
また回すコツもある。今回はハンドスピナーとガラス蓋の直径がかなり近いので、地面につけて回してから持ち上げて立たせる事が難しい。その為、手で持った状態で回してからそのまま立たせるように置くと良い。
監督官をしていただいている先生のブログ(らくらく理科教室)はこちら→らくらく理科教室 (sciyoji.site)
先生のYouTubeチャンネルはこちらから→らくらく科学実験 - YouTube
※都留文科大学理科教育の一環