墨流し 界面活性剤を用いて

今回は墨流しを行いました。

 

動画

youtu.be

 

・準備物

大きめの水槽、墨汁、洗剤、ビーカー(小) 2個、爪楊枝 2個、新聞紙、はさみ、パウチ、付箋、半紙(パウチに合わせてカット)、ラミネーター

 

・操作

  1. 水槽に水を一杯に張る。
  2. 墨汁と洗剤液(25mlに洗剤を2滴、濃度が濃いと表面張力が弱まりすぎるので、薄めが良い。)をビーカーにそれぞれ用意し、爪楊枝を入れておく。
  3. 墨汁と洗剤液のついた爪楊枝を交互に水面につけたりかき混ぜたりして、模様を作る。
  4. 模様が出来たら半紙をゆっくりと水面に被せて模様を写し取り、新聞紙の上に置いて乾かす。
  5. パウチ内に乾いた半紙と付箋に名前等を書いて挟み込み、ラミネーターでラミネートする。

・留意点

  • 水は作品が完成する都度変えること。表面張力が弱まったままや、前の人の墨が残ったままでは支障をきたすため。
  • 半紙は容器よりも小さいサイズになるようにカットしておく。
  • コピー用紙は非推奨。紙が厚めのものを使うと、模様を付けて紙を引き上げる際に紙が破けにくい。

書道などで使われる墨は、油を燃やして得る煤(スス)を使っているが、煤の炭素粒子は疎水性のため、そのままでは水に溶けない。そこでニカワ(膠)を混ぜることで、炭素粒子を水中で安定させ、墨汁として使うことができるようにしている。ニカワは、動物の骨や皮膚組織の成分で、タンパク質(コラーゲンなど)を主成分とした物質、ゼラチンとも呼ばれているものである。ニカワを混ぜて親水コロイドとして水中に安定させていまる。ニカワのような親水コロイドが、疎水コロイドを包み込むようにして水中で安定させる働きをもつものを「保護コロイド」と呼ぶ。

 

墨汁を滴下すると、墨汁に含まれているニカワが炭素粒子を引き連れて水表面に広がる。そこに油脂を加えると、分子内の疎水基部分を上に向けて単分子膜を形成しようとし、表面に広がっていた墨汁の膜が外側に押しやられてしまう。

更に墨汁を滴下しても単分子膜が邪魔になり、簡単には広がらない。しかし、その中心にさらに油脂を追加すれば、油脂はまた単分子膜となり広がって、墨汁部分も外側に追いやられる。

この繰り返しにより、墨汁の黒と油脂の透明部分の同心円状の縞模様が出来る。仕上げに水面をかき混ぜることで、複雑な模様を形成できる。油脂の分子構造、水の表面張力の低下、墨の拡散を利用した技術が、『墨流し』である。

 

油脂が水面で単分子膜を作る性質を利用すると、油脂の分子1個当たりの占める面積(s㎝₂)などを求めることができる。墨汁が外側に追いやられたところを方眼紙で写しとれば、広がった油脂の単分子膜の面積(S㎝₂)を求めることができる。

油脂の単分子膜をS、水面に並ぶ分子の個数をNとすると、S=sNー①

分子量Mの油脂mgをVmlのメスフラスコに入れて調整した場合の油脂溶液の濃度Cは、

C=(m/M)/(V/1000)mol/Lー②

その油脂溶液一滴(vml)に含まれる油脂のモル数nは、n=C・(v‘/1000)ー③

アボカドロ定数をNaとすると、n・Na=Nー④

 

④の式を①②③で整理し直すと、s=SVM/mv‘Na〔㎝2

 

100均(ダイソー)では、マーブリング液が売っていたので、色が付いた模様を写し取ることも可能。練習用の半紙を用いたが、薄すぎたせいか、水面につけて持ち上げると破ける事が多々あった。

 

監督官をしていただいている先生のブログ(らくらく理科教室)はこちら→らくらく理科教室 (sciyoji.site)

 

先生のYouTubeチャンネルはこちらから→らくらく科学実験 - YouTube

 

都留文科大学理科教育の一環

f:id:VCPteam:20210825205728p:image