アンモニウム化合物と亜鉛粉末の反応

今回は、危険な実験を行いました。

(※安全な環境と十分な設備、そして監督官がそろう現場が必要不可。安易に試すのは厳禁。)

 

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取り扱いに注意を要する実験。アンモニウム化合物(硝酸アンモニウム・塩化アンモニウム)と亜鉛の混合物に少量の水が加わることで激しい燃焼(爆発)が起こる。

反応のメカニズムは、3段階に分けて考えることができる。

1.塩化アンモニウムが水に溶解して電離、塩化物イオンが生成する。

NH4Cl → NH4+ + Cl

2.塩化物イオン(Cl)が触媒となって、硝酸アンモニウムが分解し水と一酸化二窒素が生成する反応を促す。(※生成された水は1.の反応に関与し、1.の反応が促進される。)

NH4NO3  → 2H2O + N2O

3.一酸化二窒素が亜鉛粉末と反応して、窒素が生成する。

Zn + N2O → ZnO + N2

水を加えることで1.の反応のスイッチとなり、2.で生成した水も1.の反応を加速する。2.で生成した一酸化二窒素が3.を進行させる。この2.と3.は、激しい発熱を伴い、反応を加速させていく(※炎が見えることからも激しい反応、発熱があることが見て取れる)。ポイントは、少量の水で反応が開始することと、発生する気体量が大きいため密閉した容器中で起こると激しい爆発を伴う恐れがある点である。特に、水を加えなくても、ほんのわずかな水が容器に付着していたり、湿度が高い条件下でも反応が開始することがあるため大変危険である。また、試薬を強く混合するなどの物理的な刺激でも同様である。例えば、乳棒で混ぜると、硝酸アンモニウムは摩擦で分解しやすいために量によっては大爆発に繋がる。

炎に色が付いているように見えるが、亜鉛は一般的には炎色を示さないとされている。しかし、高温下であるために炎色が起こりやすくなっているのかもしれないと推測する。花火では水色を示すとか…?

 

この実験の危険なところは、ごく少量の水で爆発的な反応が起こる点。また、少量の試薬でこの反応であることから、量によっては事故に繋がる点である。この2点からも、この実験が安易に行ってはいけないことがよくわかることと思う。

 

・注意!

この種の実験は、安易に実施してはならない。実施する明確な目的がある場合に限り、最小限の使用量で実施し、十分な設備環境と監督者の指導が必要である。特に、アンモニウム化合物は、使用方法によって爆薬の材料となるため、学校での使用が制限されている。加熱や燃焼を伴う操作は基本的に実施してはならない。また、亜鉛粉末はメッキの時同様、危険性があるので取り扱いや廃棄等は慎重に行うこと。

 

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都留文科大学理科教育の一環

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