今回は派手な反応である『テルミット反応』について実践してみました。
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アルミニウムと酸化鉄(Ⅲ)を反応させることで激しい酸化還元反応が起こり、単体鉄が生成する。反応は次のようになる。
2Al + Fe₂O₃ → Al₂O₃ + 2Fe ・・・①
この反応は酸化還元反応で、電子のやり取りとしてはアルミニウムが電子を3個放出し酸化される。
Al → Al³⁺ + 3e⁻・・・②
酸化鉄(Ⅲ)の鉄原子が電子を受け取り、単体の鉄に還元される。
Fe³⁺ + 3e⁻ → Fe・・・③
① + ②で電子を消すと、
Al + Fe³⁺ → Al³⁺ + Fe・・・④
となる。実際には Fe³は酸化鉄(Ⅲ)となっているので、④を2倍して両辺にO₃²⁻を加える。
発光を起こしつつ、高熱になることで一気に反応が進むテルミット反応。この実験は、反応熱が大きく関わっている。酸化鉄1molが反応すると852kjの熱エネルギーが放出される。この熱エネルギーによって生成された鉄が溶け、さらには反応を促進することにも役立つ。そのため、初めのマグネシウムの点火以外でエネルギーを供給しなくても、反応が進むのである。できた鉄は磁石にくっつき、ほぼ純鉄といえる。このテルミット反応を利用している例としては、鉄道のレールの溶接や焼夷弾に用いられたとされている。
ちなみにこの反応での生成熱は、
Al + 3/4O₂ = 1/2Al₂O₃ + 838kj ・・・①‘
2Fe + 3/2O₂ = Fe₂O₃ + 824kj・・・②‘
①‘×2からー②‘より、
2Al + Fe₂O₃ = Al₂O₃ + 2Fe + 852kj
この852kj/molが酸化アルミニウムの生成熱であり、この熱が反応促進と鉄の熔解に役立っている。
マグネシウムに火を点けるだけで鉄を溶かすことが出来、副生成物が酸化アルミニウム(アルミナ)だけであることから、環境汚染の問題を引き起こしにくい。
・【実験準備物】
新聞紙、500mlビーカー、キッチンペーパー2枚、ろ紙2枚、かたぬき、三角架、三脚、紙コップ、アルミニウム(Al)2.2g、酸化鉄(Ⅲ)【Fe₂O₃】6.0g、はさみ、マグネシウムリボン 5㎝、ライター、硝酸カリウム 薬さじ大の半分程度、磁石、電子天秤
・【操作】
1.机にたっぷり濡らした新聞紙を敷き詰め、500mlビーカーに水を入れ、中ほどにキッチンペーパー2枚を固定する。
2.ろ紙をトルティーヤのように2枚を上手く重ねて少し湿らせた後、かたぬきにセット。(※三角架の穴から落ちないかたぬきが必要)
三角架にかたぬきをセットした後三脚に固定する。
3.紙コップにアルミニウムと酸化鉄を量ってよく混ぜ合わせる。
(※湿気には要注意。しける前に手早く行うことがコツ。)
4.ろ紙に混ぜ合わせた粉末を山を作るように入れ、山頂に切れ目を入れてクジラの潮吹きのような形にしたマグネシウムリボンを刺す。さらに少量の硝酸カリウムをマグネシウムを差し込んだ足元周辺にまく。(下図参考)
5.ライターで点火し、十分に冷えたことを確認してから、ビーカー内に落ちた生成物を取り出し、余計な部分を砕きつつ、磁石で鉄を集める。
・【注意】
粉末や火花が飛び散るので、燃えやすいものや邪魔になるもの等は片付けたり遠ざけておく。
試料の残りは金属ゴミとして回収。机等に残る金属粉末はサビとして残る可能性があるため、何度も丁寧に水拭きを。
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※都留文科大学理科教育の一環